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投信保有者の半数が赤字!なぜ?

執筆者: ginko 発行日付: 2018-7-11

まずは前回の読者アンケートを振りかえってみます。前回の「ソーシャルレンディング募集最大手であるmaneo社について、虚偽の説明をして資金を集めた疑いで金融商品取引法違反による処分勧告が検討されているようですが、このmaneo社やソーシャルレンディングは信用できる?」では・・・

1位:maneo社もソーシャルレンディングも信用できない。 80%
2位:maneo社は信用できないが、ソーシャルレンディングは信用できる。 20%

となりました。1位は筆者も同感ですが「maneo社もソーシャルレンディングも信用できない。」で約8割ですね。

ソーシャルレンディングは概ね10%前後の利回りを約束して資金を集めていますが、常識的に考えて低金利の日本でそんな利回りが安定的に確保できるはずがありません

もちろんビジネスとして、毎年投資から10%以上のリターンを得ている会社は多くあると思いますが、そうした会社にはメガバンク、地方銀行、信用金庫、信用組合まで低利で融資してくれる金融機関は山ほどあります。わざわざソーシャルレンディングを利用して利益を外部流出させてしまう経営者など絶対いません

とするとこうした投資案件は全て何かしらの危険があるはず、という意味で「ハイリスク」ということになります。

で、「ハイリスク・ハイリターン」ということであればまだ良いのですが、「ハイリターン」である保証は全くありません。投資先が開示されていませんからね。

ちなみにちょっと誤解しがちかもしれませんが、資産運用の原則として「ハイリターンなものは全てハイリスク」です。しかし「ハイリスクなものが全てハイリターン」ではありません。「ハイリスク・ミドルリターン」だって「ハイリスク・ローリターン」だってあり得るということです。その点では投資内容の吟味は不可欠ですね。

さらに悲惨なのは、いくつかのソーシャルレンディングが破綻しているように、資金が流用されていたり、ネズミ講のような投資詐欺まがいの商品の場合は「ハイリスク・ノーリターン」ということになってしまいます・・・。

世の中にうまい話はありませんし、銀行預金の金利にゼロが並んでいるのもそうせざるを得ない理由があります。10%の利回りに目がくらんで元本を危険にさらすのは本末転倒ですね。慎重にご検討ください。

なお投票結果に戻るとそうは言いつつ2割の方は「maneo社は信用できないが、ソーシャルレンディングは信用できる。」 と回答しています。他のクラウドファンディングのように「広告目的」で実施されているソーシャルレンディングであれば確かに信用できるものはあり得るかもしれません。

しかしその場合は「少額」となるはずですね。あくまで広告目的ですから。リターンの一部が「商品」ということもありそうですね。

逆に言えば「多額の資金を高利回りで継続的に集めている案件」は「100%危ない」と言い切ってしまっていいかもしれません。経済合理性で説明できませんからね。

十分お気をつけください。

ではアンケートへの投票がまだの方は、ぜひ投票をお願いいたします。アンケートは8月4日まで。

〔投票〕https://www.ginkou.info/enquete/?p=410

〔前回のコラム〕
ソーシャルレンディング「maneo」は信用できる?


 --- Ginkou ---

投信で損失、個人の半数
https://www.nikkei.com/


投資信託を保有する個人投資家の半数近くが損失を抱えている――。金融庁が投信を販売する銀行に実施した調査で、こんな実態が明らかになった。過度な分配金や短期の売買で十分な運用収益を得られず、長期の資産形成に結びついていない。販売会社も改革に動きつつあるが、事態を重く見た金融庁は運用成績の共通指標などで顧客本位の徹底を求める。

金融庁が都銀や地銀の計29行を対象に2018年3月末時点の運用損益を調べたところ、損失を抱える顧客は46%と全体の半分近くに達した。損失率が10%以下の個人が全体の35%ともっとも多かった。個別行では「平均の運用損益率がマイナスの金融機関もあった」(金融庁)という。

運用損益は、投信の購入時と今年3月末時点の評価額を比較。累計の受け取り分配金(税引き後)や販売会社に支払う手数料なども加味して全体の収益を算出した。

ここ数年は緩和マネーの流入で世界的に株価が堅調に推移する。本来なら個人が高い収益を得ていいはずだが、実態が異なるのは日本固有の投信の構造があるからだ。

銀行や証券会社はかねて自らの手数料収入を優先し、個人の短期売買を助長しているとの批判があった。販売手数料ばかりがかさめば、肝心の運用利回りは低下してしまう。ある金融庁幹部は「金融機関のトップは手数料収入の多寡は気にしても、顧客がもうけられているかは見向きもしてこなかった」と批判する。

特に問題視されてきたのが「毎月分配型」だ。過度な分配金を顧客に支払い、元本の取り崩しが常態化した。生活費の足しにする高齢者には人気があったが、現役層の資産形成にはそぐわない。

金融庁は個人が投信の成績を比較できる共通指標を設け、銀行や証券会社に公表を求める考えだ。指標は(1)運用損益別でみた顧客の割合(2)預かり残高上位20商品のコストとリターン(3)同リスクとリターン――が柱。主に設定から5年以上の投信を対象とし、販社に顧客本位の徹底を促す。

※抜粋

〔 出典:日本経済新聞 〕

 --- Ginkou ---

個人的にはちょっと信じられないニュースでしたが、金融庁によれば投資信託保有者の半数が、分配金を加味しても損失を抱えているとのことですね。具体的に上記記事の通り、都銀・地銀29行を対象に2018年3月末の運用損益を調べたところ46%の顧客がマイナスだったということですね。その運用成績の分布はこのようになっています。



赤字と言ってもそのほとんどが「-10%未満」にとどまっているほか、黒字は10%、30%、50%と広く分布していることを踏まえれば「全体では大幅な黒字」であるのは間違いないと思いますが、しかしそれでもこの結果には違和感があります。というのも基本的には2013年のアベノミクス開始以降、「円安・株高」が進んでいて投資信託の損益もプラス基調になっているからですね。日経平均株価はこのように推移しています。



過去15年で見ても日経平均株価は最高水準にあります。つまりリーマンショック前も含めて過去15年、どのタイミングで投資をしてもその損益はプラスになっているわけで、ここから「半数が赤字」という結果には結びつきませんね・・。

また記事では「毎月分配型ファンド」の運用が非効率的だとの指摘がありますが、では現時点で残高が最大であり、毎月分配型ファンドでもある「フィデリティ・USハイ・イールドF」の運用成績をチェックするとこうなっています。



基準価額は大きく低下していますが、分配金を加味すれば過去15年でやはり最高水準となっており、こちらも「どのタイミングで投資してもプラス」となっていることが示唆されています。特に分配金を再投資した場合は如実ですね。

念のため年限毎のリターンをチェックしてみるとこうなっています。

・6ヶ月: -2.4%
・1年 : +1.3%
・3年 :年+1.20%
・5年 :年+7.01%
・10年:年+7.03%

やはり半年を除けば大幅なプラスですね・・・。

とすると上記のような多数の「運用マイナス客」の存在は、「投資結果」というよりは「投資行動」によるものということですね。考えられるのは以下2つです。

・儲かった投信は解約して利益確定されがち。

・損が出た投信はそのまま塩漬けにされがち。

ただし今般のような市場環境だと後者のケースは考えにくいですから、前者のケース、つまり儲かった投信は解約されてしまうので結果的に今残っている投信の成績は悪くなりがちということですね。

加えてそうした解約資金によって新たな投信が購入されるとすると、購入当初は3%といった販売手数料の分だけ成績は赤字となりますので、上記のように「0%~-10%」のレンジの運用成績の顧客が多く存在することと辻褄は合います。

そうなってくるとポイントは2つですね。

・そうした投信の解約資金で新たな投信を購入する「回転売買」は顧客の意思によるものなのかどうか。

・そうした赤字客の解約分まで含めた運用成績が赤字なのかどうか。

仮に回転売買が顧客の意思に基づくものであり、通算成績が黒字なのであれば、それほど目くじらを立てなくて良いということになります。

いずれにしても繰り返しになりますが、この市場環境で「投信顧客の半数が赤字」という調査結果には違和感しか感じません。ぜひ納得感のある分析を期待したいと思います。

では今回の読者アンケートは、「金融庁の調査によれば投信保有者の半数近くが赤字とのことですが、あなたの直近の投信の運用成績と生涯成績は赤字?黒字?」でいきましょう。投票は8月11日まで。

■【読者アンケート】金融庁の調査によれば投信保有者の半数近くが赤字とのことですが、あなたの直近の投信の運用成績と生涯成績は赤字?黒字?(8月11日まで)
https://www.ginkou.info/enquete/?p=415



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