1月の、世界各国の主要株式市場の株価収益率(PER)一覧を更新しました。
<1.株価収益率(PER)とは?>
株価収益率(PER)って何?という人にご説明しておきますと、株価が、その会社の利益の何倍くらいになっているか、という株価の割高・割安を示す尺度です。ある会社の一株あたりの利益が1万円として株価が20万円なら、20万円÷1万円=20倍、というわけですね。言い換えれば、「株価は利益の何年分か」を表していると言えます。株価収益率が20倍なら「利益の20年分の株価」ということですね。
で、なぜこれが大事かというと、株価が割高か割安か、全てこれだけで説明できてしまうような万能のモノサシだからです。歴史上、たくさんのバブルがありましたが、多くは株価収益率が40倍とか60倍とか80倍という、利益額から見れば気の遠くなるような株価になったんですね。
もちろん当時は、その「高い株価収益率」を正当化するもっともな理屈がたくさんあったのでしょうけれど、結果的にはどんなバブルもはじけ、高い株価収益率は「重力」に負けて低下し(時には破滅的なスピードで)、概ね15倍前後に落ち着いています。株価収益率は、特に株価が割高になっていないかどうか、目安としては「20倍を超えていないかどうか」チェックすればいいと思います。
一方で例えば15倍未満の株価収益率は相対的に割安といえますが、割安には割安な理由があるので、飛びつくのはオススメしません。あくまで「割高」のチェックに用いると良いでしょう。
<2.今月の株価収益率>
1月の世界の株価収益率の推移はこんな感じです。
1月の株価収益率の平均は前月と比較して大幅に下落しました。先月の単純平均は14.39倍で、今月は12.60倍ということですね。
下がったということは株価が「割安」になったということになります。株価が割安となる要因は以下の通りです。
・株価が下がる
・企業収益が増える
ここでいつものように最近の株価の動きをチェックしておきましょう。
■日経平均株価(6ヶ月)
■日本を除く、世界の先進国の平均株価(円建て:6ヶ月)
■世界の新興国の平均株価(円建て:6ヶ月)
言わずもがなですが・・・株価は仲良く大幅に下落していますね!過去1年間の株式相場のハイライトは昨年8月から9月にかけての「世界同時株安」なわけですが、グラフを見れば分かる通り、新年早々、あっさり同水準まで低下したことになります。
前者を「中国本土株ショック」とするなら今回は「サーキットブレイカーショック」という感じでしょうか?いずれにしても中国本土の株価の大幅下落が世界同時株安につながっているのですね。困ったことです。
いつものように具体的な数値をチェックするとこのようになっています。
・日本 :下がる(18,986円→17,147円)
・先進国:下がる(553ポイント→510ポイント)
・新興国:下がる(790ポイント→703ポイント)
やはり大幅に下がっていますね。より正確に把握するために下落率を算出するとこうなります。
・日本 :-10%
・先進国:-8%
・新興国:-11%
かなり下がった感じがしましたが、ただそれでも1割ですか・・・もちろん大幅な下落には違いありませんが、みるみる半値になったリーマンショックと比較すればそれほどでもありません。震源地が世界経済の中心であるアメリカかそうでないかでそのインパクトは大きく違ってくるということですね。
さて気になるのは今後の株価動向ですが、未来のことは誰にもわからないという点は割り引いていただいた上で、やはりこれだけ下がってくるとそれなりに悲観的にならざるを得ないですね。
特に株価が明確に昨年9月の水準を下回ってくると「実は下落トレンドが維持されていた」ということになりますのでかなり心象が悪くなります。つまりは別のコラムにも書きましたが、まさに今、「下落トレンド維持かそうでないか」の分水嶺に立っているということです。
ここで踏ん張ってくれることを期待したいと思いますが、結局15日の日経平均もわずかながらマイナスでしたからね。やや分が悪そうです。更なる下落に十分ご注意ください。
そのような株価トレンドではありますが、もう少しマクロ的に考えてみると今般の株価下落要因は以下3つと言えそうです。
1.アメリカの利上げ
2.中国経済の減速
3.原油価格の下落
これらの中で最も世界経済に影響が大きいのは1つ目のアメリカの利上げですが、これについては必要以上に心配することはないと思います。と言うのもアメリカが利上げするということは、それだけアメリカ経済が堅調であることの裏返しだからですね。
加えて利上げするもしないもアメリカの中央銀行であるFRBの判断ですので完全にコントロールされています。もし本当に世界経済が危機的な状況となれば「利下げ」を行う選択肢だってあるわけで、その点はFRBの見識を信頼してよいものと思います。
他方、コントロールが難しいのが後者2つで、まず中国経済の減速は如何ともしがたいですね。この数年間で急速に拡大した生産能力をそのまま維持することはできませんので、今後社会全体として大幅なリストラが必要になってくると思います。その過程でハードランディングしてしまう可能性も当然ゼロではありません。
ただし忘れてはいけないのは中国の成長率は減速しても6%台とそれでも十分高いという点ですね。こうした成長率が維持されている限り、とは言いつつソフトランディングする可能性の方が依然高いと思います。
その点では中国経済で問題なのは実体経済ではなく、株式市場の方だと言えるかもしれません。いつもご案内している上海市場の株価推移はこのようになっています。
つまり昨年春から夏にかけて一気に株価が2倍になった後であっという間に破裂してしまったということです・・・はかなくも美しい・・・かどうかは分かりませんが。
この中国本土の株式市場が落ち着いてくれないことには世界の株式市場も落ち着かないと言えそうですが、まだまだ下落しそうな気配がある反面、株価水準としては3,000ポイント程度と徐々に「バブル前」の水準に戻りつつあるのは良い傾向と言えるのかもしれません。
バブルが破裂するのが早かった分、萎むのもあっと言う間ということですね。となると、とっとと2,000ポイントなど必要十分な水準まで下落してしまった方が、「悪材料出尽くし」という観点からは良いと言えそうです。
いずれにしてもリスクはかなり限定されてきた、ということではないかと思います。
最後の株価下落要因は原油価格の下落ですが、これもなかなか悩ましい問題ですね。原油を買うことはあっても売ることはない日本国民からすれば、原油安は良いことでしかないように思いますが、原油価格の下落傾向が長引くにつれむしろそのマイナスの影響が世界を覆い始めていますね。
原油価格が下がるということは資源価格が下がるということでもありますが、結果として資源国だけでなく世界の資源&エネルギー企業が打撃を受けています。日本で言うと商社などがその代表でしょうか。
もしかすると、原油安によってコストセーブできた分をまるごと別の支出にあてようと言った積極的な消費文化はあまりないのかもしれませんね。となると世界経済全体で見れば原油安が進めば進むほど経済のパイが縮小していくことになります。
経済原理の観点だけから言えば「値下がりは罪」ということになるのでしょうか。
加えて原油価格の下落が中東やロシアの緊張を高める地政学上の問題となっており、このようにネガティブインパクトを見せられるとそろそろ原油価格が上がってほしいと思えてくるから不思議です。
しかしながら最もコントロールが難しいのがこの原油価格ですね。価格決定は市場に委ねられておりますし、シェール革命など外部環境を見ても原油価格が下落する要因は多くあるからです。
アメリカの利上げもダイレクトに原油価格下落につながりますしね。
そのように考えると・・・マクロ的にも今後の株価の見通しについては不透明感を感じてしまいます。少なくとも短期的には。
ただ一方で株価が下がれば下がるほど株価収益率という点では割安感が増してくることになります。上記の通り今月の株価収益率は大きく下がりましたしね。
積極的に株に投資すべきタイミングとは思いませんが、株価下落はチャンスの面もあることは頭の片隅に入れておきたいものです。
では個別の株価収益率=PERはこのようになっています。
今月の割高市場は一時的かもしれませんがゼロですね!
次の15倍以上20倍未満のゾーンですが、アメリカ/ナスダック市場、インド/MSIS市場、日経平均、南アフリカ/全株、日本/JASDAQ市場となっています。
もちろん株価は割高の時よりも割安の時に購入した方がいいわけで、これから株式投資をご検討の方はこうしたPERの状況にも注意しながら、なるべく割高な市場・タイミングは避けて投資先を選別していただければと思います。
だからと言って「低ければいい」というものではないのは申し上げた通りですが。
各株価指数のPERの具体的な推移はこちらをご参照ください。
>>>世界各国主要株式市場の株価収益率(PER)推移はこちら
https://www.ginkou.info/per/index.html
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