2月の、世界各国の主要株式市場の株価収益率(PER)一覧を更新しました。
<1.株価収益率(PER)とは?>
株価収益率(PER)って何?という人にご説明しておきますと、株価が、その会社の利益の何倍くらいになっているか、という株価の割高・割安を示す尺度です。ある会社の一株あたりの利益が1万円として株価が20万円なら、20万円÷1万円=20倍、というわけですね。言い換えれば、「株価は利益の何年分か」を表していると言えます。株価収益率が20倍なら「利益の20年分の株価」ということですね。
で、なぜこれが大事かというと、株価が割高か割安か、全てこれだけで説明できてしまうような万能のモノサシだからです。歴史上、たくさんのバブルがありましたが、多くは株価収益率が40倍とか60倍とか80倍という、利益額から見れば気の遠くなるような株価になったんですね。
もちろん当時は、その「高い株価収益率」を正当化するもっともな理屈がたくさんあったのでしょうけれど、結果的にはどんなバブルもはじけ、高い株価収益率は「重力」に負けて低下し(時には破滅的なスピードで)、概ね15倍前後に落ち着いています。株価収益率は、特に株価が割高になっていないかどうか、目安としては「20倍を超えていないかどうか」チェックすればいいと思います。
一方で例えば15倍未満の株価収益率は相対的に割安といえますが、割安には割安な理由があるので、飛びつくのはオススメしません。あくまで「割高」のチェックに用いると良いでしょう。
<2.今月の株価収益率>
2月の世界の株価収益率の推移はこんな感じです。
2月の株価収益率の平均は前月と比較して少し上昇しました。先月の単純平均は12.60倍で、今月は12.78倍ということですね。
下がったということは株価が「割高」になったということになります。株価が割高となる要因は以下の通りです。
・株価が上がる
・企業収益が減る
ここでいつものように最近の株価の動きをチェックしておきましょう。
■日経平均株価(6ヶ月)
■日本を除く、世界の先進国の平均株価(円建て:6ヶ月)
■世界の新興国の平均株価(円建て:6ヶ月)
言わずもがなですが・・・株価は全体的には昨年12月から大きく低下しています。特に年明け以降の株価下落スピードは凄まじかったですね。まさに「世界同時株安」アゲイン、という感じです。
早々に正月気分が吹き飛んでしまった方も少なくないと思います。
ただ一方で足元の株価の動きを見ると日本株も、先進国株も、新興国株もやや下げ止まりの兆しが出ております。だからこそ今月の株価収益率=PERの平均は少し上昇した、ということなのでしょうね。
いつものように具体的な数値をチェックするとこのようになっています。
・日本 :下がる(17,147円→15,967円)
・先進国:下がる(510ポイント→485ポイント)
・新興国:下がる(703ポイント→688ポイント)
・・・と思ったらどれも思いっきり下がっていますね!大変失礼しました。
株価が下がっているのにPERが上昇したということは・・・2つ目の要因、つまり「企業収益が減る」ことが理由というわけですね。なるほど。
PERの面ではすでに景気後退=リセッションが始まっていることが示唆されております。だとすれば世界の株価が総崩れとなるのも当然かもしれません。
念のためいつものように下落率を算出するとこうなります。
・日本 :-7%
・先進国:-5%
・新興国:-2%
意外と新興国の下落幅が少ないですが、これは相対的に新興国経済が好調・・・というわけではなく、単にこれまで先行して下がってきたために一足早く底が見えてきたということかもしれませんね。
逆に言えば日本や先進国の株価の下落率が大きいのは新興国の株価と比較して、これまでまだ高値を維持してきた、ということが要因と思います。
特に日本株については、相次ぐ黒田バズーカによる「円安バブル」が株価を相当、高水準に持ち上げてきましたからね。下がり始めればあっけないのも当然かもしれません。
その象徴が1月末の「マイナス金利」政策発表でしょうか。これによって確かに発表当初は「円安・株高」となったものの、その効果は数日で剥げ落ち、その後は大きく下落しています。
これまで「無敵」を誇っていた黒田バズーカ「神話」が崩れたわけですから、パニック的に下がるのもやむなしと言えそうです。実際、筆者もそのタイミングで投資資産のほとんどを売却しましたし・・・その点では筆者自身も「超」ささやかながらパニック売りに加担したことになります。
そうしたわけで株価は世界的な巻き戻しモードに入りつつあるわけですが、その要因はと言えば先月もご案内したように以下3つですね。
1.アメリカの利上げ
2.中国経済の減速
3.原油価格の下落
これらの中で最も世界経済に影響が大きいのは1つ目のアメリカの利上げですが、これについては必要以上に心配することはないと思います。と言うのもアメリカが利上げするということは、それだけアメリカ経済が堅調であることの裏返しだからですね。
加えて利上げするもしないもアメリカの中央銀行であるFRBの判断ですので完全にコントロールされています。もし本当に世界経済が危機的な状況となれば「利下げ」を行う選択肢だってあるわけで、その点はFRBの見識を信頼してよいものと思います。
実際、金融市場は徐々にFRBの利下げを織り込み始めている気もしましね。
他方、コントロールが難しいのが後者2つで、まず中国経済の減速は如何ともしがたいですね。この数年間で急速に拡大した生産能力をそのまま維持することはできませんので、今後社会全体として大幅なリストラが必要になってくると思います。その過程でハードランディングしてしまう可能性も当然ゼロではありません。
ただし忘れてはいけないのは中国の成長率は減速しても6%台とそれでも十分高いという点ですね。こうした成長率が維持されている限り、とは言いつつソフトランディングする可能性の方が依然高いと思います。
その点では中国経済で問題なのは実体経済ではなく、株式市場の方だと言えるかもしれません。いつもご案内している上海市場の株価推移はこのようになっています。
つまり昨年春から夏にかけて一気に株価が2倍になった後であっという間に破裂してしまったということですね。見事なバブル崩壊です。
ただ足元では2,000ポイント台まで下がり、こちらもいよいよ「下げ止まり」の兆しが出始めていますね。一体どういった水準が適正なのかはわかりませんが、すでに昨年のバブル前の水準まで低下したことを踏まえれば「よい塩梅」に到達しつつあるのは間違いありません。
いずれにしても、さらなる下落リスクはかなり限定されてきた、ということではないかと思います。
最後の株価下落要因は原油価格の下落ですが、これもなかなか悩ましい問題ですね。原油を買うことはあっても売ることはない日本国民からすれば、原油安は良いことでしかないように思いますが、原油価格の下落傾向が長引くにつれむしろそのマイナスの影響が世界を覆い始めていますね。
原油価格が下がるということは資源価格が下がるということでもありますが、結果として資源国だけでなく世界の資源&エネルギー企業が打撃を受けています。日本で言うと商社などがその代表でしょうか。
もしかすると、原油安によってコストセーブできた分をまるごと別の支出にあてようと言った積極的な消費文化はあまりないのかもしれませんね。となると世界経済全体で見れば原油安が進めば進むほど経済のパイが縮小していくことになります。
経済原理の観点だけから言えば「値下がりは罪」ということになるのでしょうか。
しかしながら最もコントロールが難しいのがこの原油価格ですね。価格決定は市場に委ねられておりますし、シェール革命など外部環境を見ても原油価格が下落する要因は多くあるからです。
アメリカの利上げもダイレクトに原油価格下落につながりますしね。
ただ一方で原油価格の方も30ドル前後でいよいよ「下げ止まり」の兆しが出始めております。こちらも、さらなる下落リスクは限定されてきた、という点は前向きにとらえてよいかもしれません。
もし仮にこの「中国」と「原油」という2つの懸念が収まってくるようであれば株価は再び上昇し始める可能性はありそうです。
他方、その先に世界的な景気後退=リセッションがやってくるとすれば株価は1~2年低迷することになります。今はその大きな岐路に立っているということですね。
ただPERの観点から言えば、上記グラフの通り、株価が大きく過熱する前に崩れたことになりますので、仮にリセッションが起きたとしても「傷は浅そう」というのはポジティブにとらえていいかもしれません。
もちろん、どちらにしても今は「様子見」のタイミングではありますが。
では個別の株価収益率=PERはこのようになっています。
今月の割高市場は一時的かもしれませんがゼロですね!世界同時株安を実感する状況です。
次の15倍以上20倍未満のゾーンですが、アメリカ/ナスダック市場、インド/MSIS市場、日経平均、南アフリカ/全株、日本/JASDAQ市場、イギリス/FT100となっています。
もちろん株価は割高の時よりも割安の時に購入した方がいいわけで、これから株式投資をご検討の方はこうしたPERの状況にも注意しながら、なるべく割高な市場・タイミングは避けて投資先を選別していただければと思います。
だからと言って「低ければいい」というものではないのは申し上げた通りですが。
各株価指数のPERの具体的な推移はこちらをご参照ください。
>>>世界各国主要株式市場の株価収益率(PER)推移はこちら
https://www.ginkou.info/per/index.html
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