まずは前回の読者アンケートを振りかえってみます。前回の「ジャストシステムの調査によれば銀行の手数料に対して83%の方は不満とのことですが少し割合が高すぎる気もします。あなたはATM手数料や振込手数料を払っている?」では・・・
1位:全く払っていない 77%
2位:ほとんど払っていない 22%
となりました。1位は「全く払っていない」ですね。約8割と言うことで圧倒的です。2位も「ほとんど払っていない」ということで、この2つで回答全てですから、結論から言えば読者の方々は銀行手数料について上手にやり繰りされているわけですね。
素晴らしい!
筆者も「全く払っていない」と言いたいところですが、たまに送金無料回数を超えたりする場合がありますのでどちらかと言うと「ほとんど払っていない」という状態です。
それでも銀行の手数料に関して強い不満があるかと言えば・・・もはやほとんどないですね。普段払わないのですから日常生活で手数料を意識することは全くありません。言うなれば「無料で当然」と感じているわけです。
したがって前回のコラムでご案内したように「銀行の手数料に対して83%の方が不満」といった調査結果を聞くと、「え、まだ不満を感じているの?」と言う感想を持ってしまうのですね・・・。「早く手数料が無料の銀行に乗り換えればいいのに」と感じてしまいます。
もちろん当該調査の回答者の中には、「自分は手数料無料化できたけれど一般論としては不満」という方もおられるとは思いますが。
また、確かに設問として「入出金や送金時に手数料を取られることに不満かどうか」と聞かれれば、「自分は払っていないけれど、手数料を取られれば不満」という意味で「不満」と回答した人もおられるかもしれません。
「不満ではない」と回答すると「入出金や送金時に手数料を取られることは不満ではない」と言う意味になってしまうからです。
とするとこの「不満率」の高さは「聞き方の問題」ということになるのですかねぇ。
いずれにしても預金金利が完全に崩壊してしまっている現状においては、銀行に手数料を払うことほど馬鹿馬鹿しいことはありません。「手数料無料口座」を使い倒して、上手にコストカットしていっていただければと思います。
少なくとも回答者の方々はほとんど全く払っていないわけですからね。
「わたし、手数料払い過ぎかも!」と思われた方はぜひ銀行口座の見直しをお勧めしたいと思います。
ではアンケートへの投票がまだの方は、ぜひ投票をお願いいたします。アンケートは5月20日まで。
〔投票〕http://www.old-ginkou.info/modules/xoopspoll/index.php?poll_id=1256
〔前回のコラム〕http://www.old-ginkou.info/modules/xfsection/article.php?articleid=1021
--- Ginkou ---
成長至上主義と決別を チェコの経済学者 トーマス・セドラチェク氏
http://www.nikkei.com
世界経済は今、深刻な不況だと診断する人は多い。経済学者たちは常に不況に目を向けて治療を促してきた。金融緩和政策や財政支出など経済を覚醒させる即効薬を投入すれば、一時的には経済成長のスピードを速められるかもしれない。しかし、もはや限界だ。
日本でも、安倍政権は財政・金融政策を通じて需要を人工的に作り出そうとしている。需要創出を目指す政策を否定はしないが、仮に経済が不況から脱出して好況になったとき、ブレーキをかける手段がない。そんな危うい財政・金融政策に頼り続けるべきではない。
安倍政権に限った話ではない。日本経済は過去30年にわたって政府や中央銀行から薬を飲まされてきた。その結果が、国内総生産(GDP)の200%を超える政府債務である。マイナス金利政策はこうした政策が底をついたことを象徴している。
経済は良くなるときも悪くなるときもあり、長い目でみれば不況と好況が繰り返されるのだから、不況にだけ注目するのをやめよう。薬の投入を控えれば、経済は全体として安定するだろう。
仮に日本の金利水準が2%で、国の財政が安定していたら、国民はどれだけ安心するか、想像してほしい。国の財政を安定させる上で日本の消費税率は本来あるべき水準よりもかなり低い。日本の哲学史を勉強すると、「安定」「平等」という言葉がよく出てくる。にもかかわらず、日本経済はなぜ安定しないのか不思議に思う。
日本の社会は、私たちの地球の中で最も豊かに見える。さらに経済成長しなければならない理由は見当たらない。黄金の天井に頭が届いてしまったのだ、資本主義は私たちにすべてを与えきった、もらえるものはもうないと考えたらどうか。これからは安定した社会の富を分け合えばよい。日本で問題となっている少子高齢化はおそらくこれから他の国でも進む。日本は先駆的に多くの対策を打ち出しており、よい前例になるのではないか。悲観的になる必要はない。
現在の主流派経済学は、成長至上主義が前提だ。人類が国民総生産(GNP)やGDPの測定を始めたのはごく最近で、それまでGDPの概念は存在しなかった。資本主義と民主主義の価値は「自由」であり、「成長」ではない。成長は私たちを喜ばせる特典だが、必然ではない。
政治のパフォーマンスを経済成長率で評価するのではなく、国の予算をどう使ったかを測定し、財政を安定させたかどうかを評価の対象とすべきだ。天気が毎日良ければと願い、成長に魅入られている経済学者たちのポケットの中は空っぽだ。そこから処方箋は出てこない。
〔 出典:日本経済新聞 〕
--- Ginkou ---
数年に一度、「そろそろ経済成長にとらわれるのをやめたら?」という話を聞くと、肩から力が抜けて言葉が心にしみるわけですが、今回も全く同じ感想となりました。チェコの経済学者であるトーマス・セドラチェク氏の言葉ですね。
経済学者は経済学者でも「左寄り」っぽいスタンスではありますが、それはともかくとして勢い余って全文転載してしまいましたので、お時間のある方はご一読ください。
要点を簡単にまとめるとこういうことですね。
・金融緩和政策や財政支出など経済を覚醒させる即効薬を投入すれば、一時的には経済成長のスピードを速められるかもしれない。しかし、もはや限界だ。
・日本経済は過去30年にわたって政府や中央銀行から薬を飲まされてきた。その結果が、国内総生産(GDP)の200%を超える政府債務である。
・仮に日本の金利水準が2%で、国の財政が安定していたら、国民はどれだけ安心するか、想像してほしい。国の財政を安定させる上で日本の消費税率は本来あるべき水準よりもかなり低い。
・日本の社会は、私たちの地球の中で最も豊かに見える。さらに経済成長しなければならない理由は見当たらない。
主張としては以下2つに集約されるでしょうか。
・金融緩和や財政出動はもはや限界であり期待を捨て不況を受け入れるべき。そうすれば長期的には経済はむしろ安定する。
・経済成長しなければいけないという強迫観念を捨てるべき。日本はすでに十分豊かである。
なお本文中の「仮に日本の金利水準が2%で、国の財政が安定していたら、国民はどれだけ安心するか、想像してほしい。」という言葉に深く共感される方は少なくないと思いますが、補足すると
・金融緩和策をやめる → 金利が上昇する
・財政支出をやめて、消費税増税を受け入れる → 財政が安定する
というロジックですね。どちらもかなりの痛みが伴いますが、このままでは薬漬けで死んでしまいそうですから、「痛みか死か」という選択をしなければいけない、ということなのでしょうね。
借りたものはいつか返さないといけないですし。
しかし氏のより根本的な考えはタイトルにある通り、「成長至上主義と決別を」ということですね。成長を目指すから金融緩和政策や財政支出といった「薬」を飲まないといけなくなるわけで、成長から目を離せば、薬をやめ経済や財政を長期的に安定させることができる、というわけです。
「日本の社会は、私たちの地球の中で最も豊かに見える。さらに経済成長しなければならない理由は見当たらない。黄金の天井に頭が届いてしまったのだ、資本主義は私たちにすべてを与えきった、もらえるものはもうないと考えたらどうか。」という言葉には、まさに成長至上主義に染まった頭をハッと我に返らせる力がありますね。
特に加齢に伴い、徐々に露骨な競争意識を失いつつある筆者の「枯れ感」ともよく合います。
また振り返ってみれば日本経済は「失われた10年」と言われた90年代以降そうした成長が止まっているわけですが、しかし以降の若者たちの「幸福度」「満足度」がほかのどの時代の若者よりも高いのは有名な話です。
つまり体感としても、「ガムシャラ」より「ゆとり」の方が幸せ度合が高くなることを知っているわけですね。
けれども。
とは言いつつ世界経済全体としては年間3%程度のペースで成長しているわけで、そうした中、日本だけ足踏みしていいのか、マイナスでいいのか、という議論はあると思います。
言ってみれば「僕はテストをうけない」と決めてテスト勉強しないのはラクでいいのだけれど、テスト勉強している子が学力を高める中で自分だけ学力が低下していいのか、ということですね。
また、経済をアスリートの世界だと思えばどうでしょう?「勝たなくていいや」「もっと気楽にやろうぜ」といったラブ&ピースで生き残れるかと言うとそれは難しそうです。応援してくれる人もいないでしょうしね。
経済=競争と捉えるなら、やはり「勝つこと」「成長すること」が目標になってくると思います。
成長を目指すというのはイデオロギーや経済学的スタンスではなく、もっと本能的・本質的なものなのでしょうしね。そもそも、受精の段階で宝くじ並みの競争が起きているわけですから、そうした競争意識はすべての生き物に刷り込まれていることは間違いありません。
もちろん、どこまでも本能に従う必要はありませんが、しかし成長を諦めてこなかったからこそまだ世界3位の経済大国を維持していると考えれば、やはり「成長至上主義」と決別するのは難しそうですね。
筆者自身もそうしたヒッピー思考に馴染むにはもう少し年齢を重ねる必要がありそうです。
ということで今回の読者アンケートは「経済学者セドラチェク氏は、日本は地球の中で最も豊かに見える、さらに経済成長しなければならない理由は見当たらないとして、成長至上主義との決別を訴えていますが、賛同する?」でいきましょう。投票は5月27日まで。
■経済学者セドラチェク氏は「日本は地球の中で最も豊かに見える、さらに経済成長しなければならない理由は見当たらない」として成長至上主義との決別を訴えていますが、あなたは賛同する?(5月27日まで)
http://www.old-ginkou.info/modules/xoopspoll/index.php?poll_id=1258
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