まずは前回の読者アンケートを振りかえってみます。前回の「消費税再増税の延期はほぼ確定のようですが、延長されるなら何年が良い?」では・・・
1位:むしろこのまま増税すべき 36%
2位:増税そのものを中止 26%
3位:3年延期 15%
4位:1年延期 5%
〃:2年延期 5%
〃:5年延期 5%
〃:10年延期 5%
となりました。1位は「むしろこのまま増税すべき」で約4割ですね。「財政再建派」の意見、ということになるのでしょうけれど筆者も全く同感です。
増税しない理由はたくさんありますが、そうしたことにいちいち配慮していれば増税など永遠にできないことになります。そうしている間にも国の借金は増え続けているわけですからね!
そして、先送りすればするほど問題は深刻化していきます。多重債務者に対して「今は生活水準を下げたくないだろうから、もう少しこのままでもいいんじゃない?」とアドバイスする人はいませんよね。どんどん完済が難しくなるからです。
むしろ「生活水準を大きく下げてでも毎月の収支を黒字にして借金を1円でもいいから減らせ!」と言いますよね。100人が100人。
であるなら、なぜ国の借金に対しても100人が100人、同じことを言わないのかとても不思議です。残念ながら「自分には甘い」というのは世の常なのですかねぇ。
ちなみに全体をまとめるとこのような感じになります。
・このまま増税すべき 37%
・数年延期すべき 36%
・増税は中止 27%
見事に分散していますね!「増税」が4割、「延期」が3割、「中止」が3割ということです。ただ7割の方が「増税を許容している」という点では良識的と言えるかもしれません。
しかし別の見方をすると、約6割の方が「予定通りの増税には反対」と言うことであり・・・少なくとも夏に参議院選挙が控え、衆議院の解散総選挙もささやかれているこのタイミングで、安倍政権が「延期」に傾くのも当然と言えるかもしれません。
安倍総理が一言も発しないまま、増税延期が既成事実化しつつあるわけですが、サミット後に正式発表、ということになるのですかね?たかが2%ですがされど2%です。注目ですね。
ちなみに延期するなら上記の通り「3年延期」が相対的に支持を集めています。2017年の3年後ですから2020年というわけですね。オリンピックのどさくさに紛れて、ということになりますが、消費者心理の悪化を少しでも和らげようとするなら・・・意外と悪くないタイミングかもしれません。
いずれにしても2020年のプライマリーバランスの黒字化目標に向けて着実に財政再建が進むことを、半ば諦めつつも期待は失わないようにしたいと思います。
ではアンケートへの投票がまだの方は、ぜひ投票をお願いいたします。アンケートは6月18日まで。
〔投票〕http://www.old-ginkou.info/modules/xoopspoll/index.php?poll_id=1264
〔前回のコラム〕http://www.old-ginkou.info/modules/xfsection/article.php?articleid=1029
--- Ginkou ---
為替の節目が示す株価水準
http://www.nikkei.com
円相場の変動が企業業績と株価を揺さぶる展開が続いている。今後の為替相場を考えるために、長期的なモノサシである購買力平価(PPP)の基礎的な考え方を知っておこう。
「これまでは為替の追い風をうけ実力以上に収益の拡大局面が続いた。今年に入り大きく潮目が変わった」。トヨタ自動車の豊田章男社長は11日の決算発表でそう語った。同社は2017年3月期の想定為替レートを1ドル=105円と見込み、連結純利益は35%減の1兆5000億円とした。
円安という「追い風」は去りつつあるのか。PPPの考え方からは、そうである可能性が見えてくる。
インフレ率の高い国の通貨は、買えるモノの量が少なくなるので価値が下がり、長期では為替相場も下落するというのがPPPの考え方だ。2国間の物価上昇率の差から為替相場の均衡点を計算する。短期的な相場予測には適さないが、長期のトレンドや水準感を見る上で有効だ。
円の変動相場制が始まった1973年を基準年に、企業物価を使って円相場(対ドル)のPPPを計算してみた。長期で右肩下がり(円高)に推移しているのは、日本のインフレ率が米国より低い(円の通貨価値は相対的に高くなる)状況が長く続いてきたため。足元では約99円になっている。
円相場は日銀の異次元緩和を契機にPPPから円安方向に大きく乖離(かいり)し、2015年に乖離率は一時、過去最大だった80年代前半に並んだ。日米金利差拡大や日本のインフレ率上昇という期待を事前に大きく織り込んだからだ。
しかし今年、円はPPPの水準に大きく近寄ってきた。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストはこれを「米国の利上げピッチ縮小や日本のインフレ率の上昇鈍化で円相場が本来あるべき水準に戻ってきた」と表現する。
ただしPPPの数値の絶対視は避けたい。基準年の採り方や対象とする物価の範囲でも変わるからだ。例えば基準年を80年にすれば現在のPPPは90円台前半だし、経済協力開発機構(OECD)の計算では106円。「PPPを基にした適正レートは1ドル=95~105円程度」(唐鎌氏)とざっくり考えておきたい。
一方で90円台への円高進行もリスクシナリオとして考えておきたい。実際の円相場は73年以降の平均でPPPより約9%円高水準で推移してきた。これを今のPPPに当てはめると90円程度だ。龍谷大学の竹中正治教授はこの水準を意識し「今の妥当なレートは90~100円くらい」と話す。
〔 出典:日本経済新聞 〕
--- Ginkou ---
最近の株価の動きを振り返ると主に「中国株バブルの崩壊」、「中国経済の減速」、「原油価格の低下」、「アメリカの利上げ懸念」などを要因として、昨年の8月に第一弾、そして今年の1月に第二弾の「世界同時株安」が起こりました。
このまま予想より早く新たな金融危機が起こるのかと思いましたが、今のところそれは杞憂だったようで世界で株価が持ち直しつつあります。まず上海の株式市場はこう。
回復とまではいかないものの、3,000ポイント前後で落ち着きつつあるようですね。
次にアメリカの株式市場はこう。
こちらはより鮮明に2つの世界同時株安から回復しつつあります。アメリカ株は下がるのも早いですが、回復するのも早いですね。
このように株式投資へのリスクが後退しているのであれば、投資するタイミングかと前向きに考える方もおられるかもしれませんが、筆者がもう1つその気になれないのは為替相場に対する懸念ですね。ドル円相場はこのように推移しています。
足元では多少円安に戻してはいるものの、グラフ全体としては思いっきり円高基調ですね。
これはアメリカの利上げ懸念が後退していることが主因ですが、最近ではまた利上げ懸念が出始めていることもあり、このままどんどん円高が進むかどうかは分かりません。
しかし投資家を不安にさせるものとして、「1月の追加金融緩和=マイナス金利が、為替相場には全く影響しなかった」という点が挙げられそうです。これまでの「円安バブル」は日銀の異次元緩和=「黒田バズーカ」によって引き起こされてきたわけですが、その神通力が切れ始めているとなると、為替相場は本来あるべき水準まで戻るのが当然のように思います。
ただ問題はその「本来あるべき水準」がいくらか全く分からないという点ですね!数年前までドル円相場は80円台だったことを踏まえればそこまで円高となってもおかしくありません。
為替相場に関して何か客観的な物差しはないかしらん、と思っていたところに上記記事を見かけました。為替の適正水準を計るために購買力平価=PPPを使ってみてはどうか、ということですね。
購買力平価とは、筆者の理解が正しければ、2つの国の物価が同じ水準になるように為替相場が変動していくという考え方です。たとえばアメリカでのスターバックスが1杯3ドルで、日本でのスターバックスが1杯300円なら、ドル円相場は1ドル=100円になる、といった具合です。
ではその購買力平価と実際の為替相場の推移をチェックしてみるとこうなっています。
こうして見ると確かにかなり整合性があることが分かります。
そしてポイントとなるのは、実際の為替相場はこの購買力平価より高かったり低かったりするものの長期的には同じ水準に収れんしていっている、という点ですね。
では気になる足元の購買力平価はいくらかと言えば「99円」となっています。これを基準にすれば今の109円前後のドル円水準というのは・・・やはり「円安」ということになるのでしょうね。
海外資産に投資するなら円高水準になるまで待っても遅くはなさそうです。
ちなみにこの購買力平価を参考にするなら、この「企業物価ベース」のものを利用するのがミソなのでしょうね。なぜかと言うのは今回は踏み込まないでおきます(笑)。
そうしたわけで筆者は、今後この購買力平価を投資のモノサシにする気満々ですが、気になるのはどこで最新の数値が提供されているかという点ですよね。そこでネットを検索すると国際通貨研究所が月1回発表しているようです。今月のデータはこのようになっています。
企業物価の購買力平価は今月は「98.77円」ということで、当たり前かもしれませんが記事の「99円」という水準とピッタリ一致します。
当サイトでも毎月こちらの数値はご案内していきたいと思いますので、ご興味がある方は参考にしてみてください。
ということで今回の読者アンケートは「足元では109円前後とやや円安となっているドル円相場ですが、ズバリ今は円高?円安?適正水準?」でいきましょう。投票は6月25日まで。
■足元では109円前後とやや円安となっているドル円相場ですが、ズバリ今は円高?円安?適正水準?(6月25日まで)
http://www.old-ginkou.info/modules/xoopspoll/index.php?poll_id=1266
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