10月の、世界各国の主要株式市場の株価収益率(PER)一覧を更新しました。
<1.株価収益率(PER)とは?>
株価収益率(PER)って何?という人にご説明しておきますと、株価が、その会社の利益の何倍くらいになっているか、という株価の割高・割安を示す尺度です。ある会社の一株あたりの利益が1万円として株価が20万円なら、20万円÷1万円=20倍、というわけですね。言い換えれば、「株価は利益の何年分か」を表していると言えます。株価収益率が20倍なら「利益の20年分の株価」ということですね。
で、なぜこれが大事かというと、株価が割高か割安か、全てこれだけで説明できてしまうような万能のモノサシだからです。歴史上、たくさんのバブルがありましたが、多くは株価収益率が40倍とか60倍とか80倍という、利益額から見れば気の遠くなるような株価になったんですね。
もちろん当時は、その「高い株価収益率」を正当化するもっともな理屈がたくさんあったのでしょうけれど、結果的にはどんなバブルもはじけ、高い株価収益率は「重力」に負けて低下し(時には破滅的なスピードで)、概ね15倍前後に落ち着いています。株価収益率は、特に株価が割高になっていないかどうか、目安としては「20倍を超えていないかどうか」チェックすればいいと思います。
一方で例えば15倍未満の株価収益率は相対的に割安といえますが、割安には割安な理由があるので、飛びつくのはオススメしません。あくまで「割高」のチェックに用いると良いでしょう。
<2.今月の株価収益率>
10月の世界の株価収益率の推移はこんな感じです。
10月の株価収益率の平均は前月と比較してわずかに上昇しました。先月の単純平均は14.44倍で、今月は14.45倍ということですね。
上がったということは株価が「割高」になったということになります。株価が割高となる要因は以下の通りです。
・株価が上がる
・企業収益が減る
ここでいつものように最近の株価の動きをチェックしておきましょう。
■日経平均株価(6ヶ月)
■日本を除く、世界の先進国の平均株価(円建て:6ヶ月)
■世界の新興国の平均株価(円建て:6ヶ月)
全体的な株価トレンドとしては「堅調」という感じですが、1ヶ月前と比較しても上昇しているのは間違いなさそうです。具体的な数値をチェックするとこのようになっています。
・日本 :上がる(16,519円→16,856円)
・先進国:上がる(484ポイント→494ポイント)
・新興国:上がる(745ポイント→771ポイント)
やはりどの指数も上昇していますね。今月、PER=株価収益率が上昇したのは「株価が上がったから」と言うことですね。
ちなみに毎月ご案内しているように、これらの指数に大きな影響を与えているのが為替相場です。日本株の動きは為替相場の動きに連動していることに加えて、残り2つの指数もいずれも「円建て」であり、円高になれば低下、円安になれば上昇するからです。
特に最近は為替相場が大きく変動していますからね!その影響は大きいわけですが、為替相場のグラフをチェックしてみるとこうなっています。
■ドル円相場
この1年間でかなり急激な円高への巻き戻しが起きていたわけですが、8月くらいに下げ止まり、この1ヶ月はジワジワと円安に向かっているように見えますね。上記の通り円安となればどの指数も上昇することになりますので、今月株価が上昇したのは円安が影響したのは間違いなさそうです。
なお、アメリカの株価はこのようになっています。
■アメリカ株価(S&P500)
こちらは意外にも少し下落していますね!
そのように円安ドル高が進み、アメリカの株価は低調だけれども日本の株価は好調なのだとするとその理由は1つしか思いつきません。アメリカの「利上げ懸念」の高まりですね。
実際、金融市場はアメリカの12月の利上げの可能性をかなり織り込んできているようです。だとすると、少なくとも日本の金融市場は当面「円安株高」の恩恵を受けそうです。
これで日銀が再び金利引き下げに動けば完璧ですね。
だとすれば日本の投資家としては喜ばしいことですが、ただ一方で思い出されるのは2015年夏以降の「世界同時株安」です。その犯人は「アメリカの利上げ懸念」と「中国本土株のバブル崩壊」と言われておりまして、今回も同じような力学が働くのであれば、再び「アメリカ利上げ」をキッカケにした同時株安が起こる可能性は十分あります。
しかしそうは言いつつ「共犯」であった中国本土株は徐々に落ち着きを取り戻しつつあるように見えます。
■中国上海株価
足元ではむしろ「上昇基調」と言っていいかもしれません。
さらにアメリカの利上げを事前に市場に十分織り込ませることができればショックはかなり小さくすることができるようにも思えます。
アメリカの利上げが本当に12月に行われるのか、そして金融市場はどういう反応をするのか、とても興味深いです。
うまく行けば世界の株価は動揺せず、「円安だけが残る」という形になるわけですが・・・さすがにそれは虫が良すぎるかもしれません。
なお、反対に急激な円高が起こるケースとして先月は、「あの奇妙な髪形のご老人がアメリカ大統領になる」場合を指摘しましたが、その可能性は徐々に低下しております。
日本経済のためにはヒラリー氏の方が良いということですね。アメリカ国民にとっても同じなのではないかと思ったりしますが。
そうしたわけで、しばらくはアメリカの金融政策に歩調を合わせる形でジワジワ円安が進んでいく可能性がありますが、しかしいつもご案内しているように、金融危機が地震と同じようにある一定の周期で起こるとすれば為替相場の見通しはこうなるのかもしれません。
・短期 : 円安
・中期 : 円高
何と言っても前回の金融危機であるリーマンショックから8年以上が経過しているわけですからね。いつ次の金融危機が来てもおかしくありません。
もしそうだとすれば、どれくらいの期間投資するかによって、その投資方針は大きく変わってきそうです。
筆者は長期投資家ですので金融危機で大きく円高株安が進み、絶好の投資チャンスが訪れることを待ちたいと思います。
そんなに都合よく金融危機が起きるのかどうかは分かりませんが・・・。
個別の株価収益率=PERはこのようになっています。
今月の割高市場は先月に引き続きアメリカ/ナスダック市場ですね。
次の15倍以上20倍未満のゾーンですが、インド/MSIS市場、イギリス/FT100、アメリカ/NYダウ、日経平均、南アフリカ/全株、日本/JASDAQ市場、そしてブラジル、ボベスパ市場となっています。
再び徐々に増えてきましたね。
もちろん株価は割高の時よりも割安の時に購入した方がいいわけで、これから株式投資をご検討の方はこうしたPERの状況にも注意しながら、なるべく割高な市場・タイミングは避けて投資先を選別していただければと思います。
だからと言って「低ければいい」というものではないのは申し上げた通りですが。
各株価指数のPERの具体的な推移はこちらをご参照ください。
>>>世界各国主要株式市場の株価収益率(PER)推移はこちら
https://www.ginkou.info/per/index.html
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