まずは前回の読者アンケートを振りかえってみます。前回の「多数の被害者を出したシェアハウス「かぼちゃの馬車」投資。類似の被害を防ぐには誰が一番反省すべき?」では・・・
1位:個人投資家 41%
2位:銀行 23%
3位:運営会社 18%
〃 :全員 18%
となりました。1位は「個人投資家」という回答で約4割ですね。筆者も同感です。
一方、銀行の責任を一番強く感じている方は少数派ですね。
しかし前回のコラムでもご案内したようにメディアは「スルガ銀行の不正」を糾弾するものが多いです。「不正」というと何か不当な利益を得たというイメージが強いですが、実際には破綻した運営会社や投資家の損失の尻ぬぐいをしているのはスルガ銀行なわけで、何が不正だったのか?という違和感はずっと感じています。
もちろん行員が預金書類などの改ざんを黙認していたのを指すのでしょうけれど、それは「行員のスルガ銀行に対する不正」であって、運営会社や投資家への不正ではありません。むしろスルガ銀行に不正を働いたのは運営会社と投資家ですし・・・。
結果的に「審査が甘かった」とは言えますが、投資家からすれば「より多くの融資を、より低い金利で借りられた」ということですから、感謝こそすれ、「何で貸したんだ!」と怒るような筋合いのものではありません。もし厳密に審査されていればもっと金利は高くなっていたでしょうからね。
・・・などと思っていたら今朝の報道では「シェアハウス所有者側、スルガ銀行員らを告発」とのことです。引用するとこういうことですね。
・告発容疑は2014年9月~17年11月、所有者35人がシェアハウス建設のため融資を受ける際に預金通帳や入出金明細などを書き換え、融資の根拠資料として使った疑いがあるとしている。所有者の自己資金を多く見せかけ、通常なら銀行の審査を通らず融資を受けられない場合でも多額の融資を貸し付けたとみられるという。
・・・マジですか・・・。スルガ銀行側が行員やシェアハウス所有者を訴えるという話なら分かりますが、なぜシェアハウス所有者が行員を訴えるのでしょうか?「通常なら銀行の審査を通らず融資を受けられない場合でも多額の融資を貸し付けた」ということですが、言い換えればそれは「通常なら銀行の審査を通らず融資を受けられない場合でも多額の融資を貸し付けてくれた」という美談とも言えます(やり方はもちろんよろしくありませんが)。
さらに言えば今回の焦げ付きの原因は、運営会社側のビジネスモデルとシェアハウスのキャッシュフローであって、仮に200万円の預金が2,0000万円に改ざんされていたとしても全く関係ありません。4ヶ月後に自己資金が底を尽くか、40ヶ月後に自己資金が底を尽くかの違いでしかありません。そうした点も、殊更クローズアップされることに違和感を感じますねぇ。
運営会社に騙され、路頭に迷っている個人投資家の方々にはもちろん同情しますが、ただ今回の騒動の原因を「スルガ銀行が甘い融資をしたからだ」とするのは間違っています。「主犯」は、サブリース契約がなくなっても採算が確保できるのか検証しなかった個人投資家ですね。
そこをはっきりさせないと、同じような詐欺的な不動産投資が永遠に起こり続けることになります。
再発防止の観点から、メディアはしっかり個人投資家の責任を明確にしていっていただければと思います。「サブリース契約は危ない」というイメージを広げるだけでも随分と再発防止に資するのではないでしょうか?
ではアンケートへの投票がまだの方は、ぜひ投票をお願いいたします。アンケートは6月16日まで。
〔投票〕https://www.ginkou.info/enquete/?p=377
〔前回のコラム〕シェアハウス問題。スルガ銀行の何が悪い?
--- Ginkou ---
米長期金利、6年10カ月ぶり高水準
https://www.asahi.com
15日午前のニューヨーク債券市場で米長期金利が一段と上昇(債券価格は下落)し、指標である米10年物国債利回りは一時3.06%と2011年7月以来、6年10カ月ぶりの高水準をつけた。小売売上高など米経済指標が改善したことで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ加速を巡る思惑が改めて強まった。
外国為替市場では日米金利差が広がったことを受けて円売り・ドル買いが優勢となり、円相場は1ドル=110円37銭前後と今年2月以来、約3カ月半ぶりの安値をつける場面があった。
米長期金利は4月下旬に4年3カ月ぶりに節目となる3%台に乗せていた。原油高などを踏まえ物価上昇が続くとの見方も強く、米国債が売られやすくなっている。
〔 出典:日本経済新聞 〕
--- Ginkou ---
アメリカの長期金利の上昇が続いていますね。ついに節目の3%を超え、約7年ぶりの高水準とのことです。最新のグラフをチェックするとこうですね。
確かに直近5年のピークである2013年末の水準を超えたことが分かります。アメリカ経済は好調ですし、雇用関係の指標も良好ですし、物価も上昇しています。となると金利が上昇するのは当然ですね。
そして金利が上昇すれば、米ドルも上昇しますので「円安」につながってきます。つまりは日本の株価にも良い影響が出てくるということですね。同じ期間のドル円チャートを並べてみると相関しているでしょうか・・・。
んー意外と「米金利高=ドル高」というわけではないですね(苦笑)。むしろ「米金利安=ドル高」という感じですが、これは日本で2013年から「異次元緩和」がスタートしたという金融政策の影響も大きそうです。
というわけでいきなり説得力が薄れてしまっていますが、ただセオリーとしてはやはり「米金利高=ドル高」ですね。円安の恩恵が広がることを期待したいと思います。
ただ一方で。
本質的にはアメリカの長期金利の上昇は、アメリカの好景気の終わりを意味します。景気が過熱するから金利が上昇するわけで、景気が過熱すればするほど・金利が上昇すればするほど、「宴の終わり」が近づいてくるわけですね。
また、その「終わり方」もより激しいものになっていきます。
そもそも今回の景気回復はリーマンショック直後の2009年から続いていますので明らかに長すぎです。景気拡大期の平均寿命は大体3年とか4年のようですので、優に倍以上になっています。
それだけリーマンショックの影響が大きかったとも言えますが、投資家からすれば「金利が上がっているね~」ではなく、「次の経済危機・金融危機が近づいている」という感覚が必要ですね。
思い起こせば10年以上前、著名なアナリストの方にお会いした時、投資のタイミングを判断する上で最も重要なものは何ですかとお伺いしたところ「アメリカの長期金利」と即答されておりました。
当時はそんなものかな?とちょっとピンと来ませんでしたが、今なら分かります(笑)。
もちろん、アメリカの好景気がいつまで続き、長期金利がどれくらい上昇するかは誰にも分かりません。明日かも知れませんし、1年後かも2年後かも5年後かも知れません。
分かりませんが、唯一確かなのは「危機は必ずやってくる」ということですね。
アメリカの金利が上昇すればするほど、アンテナを高く張っていただければと思います。
では今回の読者アンケートは、「アメリカの長期金利は約7年ぶりの高水準となっており、短期的には円安が期待できる一方で、中長期的には景気後退の可能性が高まっています。次の経済危機・金融危機はいつ起こる?」でいきましょう。投票は6月23日まで。
■【読者アンケート】アメリカの長期金利は約7年ぶりの高水準となっており、短期的には円安が期待できる一方で、中長期的には景気後退の可能性が高まっています。次の経済危機・金融危機はいつ起こる?(6月23日まで)
https://www.ginkou.info/enquete/?p=382
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