まずは前回の読者アンケートを振りかえってみます。前回の「金融法委員会(事務局・日銀)によれば、法的には銀行が預金金利をマイナスにして預金者から利息をとることはできないと指摘したとのことですが、あなたは預金金利がマイナスになると思う?」では・・・
1位:預金金利はマイナスにならないが、手数料などで実質マイナスになりえる。 86%
2位:預金金利はマイナスにならないと思う 13%
となりました。1位は「預金金利はマイナスにならないと思うが、手数料などで実質マイナスになりえると思う。」ということで9割と圧倒的です。筆者も全くの同感です。
そもそも日銀の黒田総裁自身が「預金金利はマイナスにならないと思う。しかし手数料は別の話。」と述べており、そこから考えてもこの回答というのは自然ですね。
また「預金金利もマイナスになると思う」という悲観的な回答がゼロだったことは前向きにとらえてもいいかもしれません。預金金利がプラスである限り、これまでただでさえ少なかった利息がさらに減る「だけ」の話ですので慌てる必要はありませんからね。
逆に預金金利がマイナスになると思えば、プラス金利の銀行を探したり、より有利な運用先を見つけようとしたり、タンス預金用の金庫を買ったりとバタバタすることになります。
単にバタバタするだけなら良いのですが、マイナス金利という、安全な運用でプラスを確保することが難しくなる環境でより有利な運用先を見つけようとすると、過大なリスクを取ったり、怪しげな運用商品に手を出したり、それこそ投資詐欺に引っかかってしまう可能性もゼロではありません。
タンス預金にしても盗難や紛失、焼失のリスクを考えればあまりお勧めできる保全策ではないですね。我々が思っている以上に空巣などの被害は多いものですし、火事も毎日そこら中で起きています。
東日本大震災の津波の時にはタンス預金にされていた札束がプカプカ浮いていたという話も報道されていましたね。もちろん誰が持ち主か特定するのは困難です。
われわれ預金者はついつい利息や利回りの方に目が行ってしまいますが、しかしそれは「元本が安全である」ことが大前提です。どれだけ金利が高くても低くても、金利より元本の方がはるかに重要であるのは間違いありません。
仮に10%の利息でも元本が吹き飛べば-90%の利回りですからね。
つまり常に元本の安全を最優先して考えるべきですが、「マイナス金利」のインパクトはそうした「預金者としての基本動作」すら混乱させてしまう可能性があるということです。こういう時こそ決してパニックにならずバタバタしないことが肝要ですね。
仮にマイナス金利が導入されたり、手数料などによって実質マイナスになったとしてもそのコストはごくわずかです。仮に-0.1%となっても、100万円なら年間1,000円、1,000万円でも年間1万円です。「1万円」と聞くと「うわ!」と思われるかもしれませんが、仮に月4回ATM手数料として216円払うと年間で10,368円ですからね。すでにそれくらいのコストを払っている人もおられると思います。
だからと言って手数料払い過ぎで「一文無し」になってしまった人はいないでしょうから、パニックにならず冷静に対応したいものですね。仮に1万円ずつ払っても元本がゼロになるまでに1,000年かかります。
もちろんアンケート回答者の方々は現状を正確に把握されており、冷静なのではないかと思いますが。
いずれにしてもマイナス金利政策が発表されてからまだ1ヶ月ですからね!数ヶ月様子を見てから動き出したとしても大きな問題はないと思います。金融市場の方も徐々に落ち着きを取り戻しつつあるように思えますしね。
筆者としてもマイナス金利に関しては継続的に正確な情報発信を心掛けたいと思います。
ではアンケートへの投票がまだの方は、ぜひ投票をお願いいたします。アンケートは3月24日まで。
〔投票〕http://www.old-ginkou.info/modules/xoopspoll/index.php?poll_id=1240
〔前回のコラム〕http://www.old-ginkou.info/modules/xfsection/article.php?articleid=1005
--- Ginkou ---
定期・住宅ローンの金利低下
http://www.nikkei.com
マイナス金利の導入決定以降、金融商品の金利は軒並み下がる傾向にある。大手銀行やゆうちょ銀行の普通預金・通常貯金は0.02%から0.001%へ、定期預金も期間が長いものを中心に下がった。
個人向け国債の10年変動金利型は2月募集分の金利は0.05%と、商品の設計上の最低水準になった。基準となる市場金利が下がったためだ。国債の利回り低下を受け、ゆうちょ銀行と日本郵便は日米の国債で運用する投資信託「JP日米国債ファンド」の発売を取りやめた。
住宅ローンでは三井住友信託銀行が10年固定型の最優遇金利を年0.5%にすると発表。メガバンク3行はそろって0.8%にするなど、引き下げ競争は過熱している。
金利の低下で今後増えるとみられるのが、貯蓄性のある保険商品の売り止めや実質的な値上げだ。すでに一部の保険会社は一時払い終身保険の販売をやめたり、保険料の引き上げを決めたりしている。
※抜粋
〔 出典:日本経済新聞 〕
--- Ginkou ---
再び再びマイナス金利ネタで恐縮です。そろそろマイナス金利に関するネタも尽きつつありますので、早晩元のペースに戻るのではないかと思いますが、もう少しお付き合いください(汗)。
さて上記記事が指摘するまでもなく「マイナス金利」政策に伴う金利の低下が各金融商品に波及しています。このマイナス金利政策は銀行から見ればおそらく「新たな預金は赤字になる」ということでしょうから、ぶっちゃけ「新たな預金はいらない」ということですね。
以前は100万円以上新規で預金すれば粗品などをもらえたのではないかと思いますが、今ならどういう顔をされるのでしょうね?少なくとも支店長室や応接室に通されることはなさそうです。
仮に通されるとすれば目的は「ライバル銀行利用の勧め」「分散運用の案内」とかでしょうか?もしかすると銀行の各支店長の今後のノルマの1つに「支店の預金量をいかに増やさないか」というものが加わるかもしれませんね(苦笑)。
とは言いつつ銀行としては今のところ「減るのも困る」でしょうから、目標としては「支店の預金量をいかに前期末と同じ規模に留めるか」ということかもしれません。
期末になると取引先企業に対して「預金をお願いします!」といった営業があったやに聞いておりますが、預金が増えすぎた支店などは「(預金を引き出して)タンス預金をお願いします!」といったセールスが繰り広げられるのかもしれません。いやはや。
と、話がそれまくっておりますが、とは言いつつこのマイナス金利政策の影響は、家計全体で見ればプラスと試算されているようです。「これだけ預金金利が下がっているのにプラスなんておかしい!」と思われるかもしれませんが、なぜプラスかと言えば金利が下がれば確かに預金利息は減るものの、住宅ローンなどの支払利息も減るからですね。
2015年9月末の日本の家計全体の数字は以下の通りです。
・現預金 : 887兆円
・借入 : 313兆円
預金金利が全体的に0.03%から0.001%に低下したとすると利息の減少額は-2,572億円。他方、住宅ローン金利が0.1%程度下がるとすれば支払利息の減少額は-3,130億円。差し引きでは確かに家計全体で558億円のメリットがある、ということになります。
ただしこの試算に1点落とし穴があるとすれば、預金金利は放っておいても下がるけれど、借入金利は放っておいては下がらない、という点ですね。
家計の借り入れの大半は住宅ローンだと思いますが、固定金利なら金利が変わらないのは当然として、変動金利もやはり金利が変わりません。変動金利はそもそもベースとなる金利が2008年12月からの「ゼロ金利政策PART2」によってすでにほぼゼロとなっているからですね。
つまり今支払っている変動金利利息のほとんどの部分は「銀行の利ざや」であり、営利企業である銀行が自発的に利ざやを削ることはあり得ませんので、これを引き下げるには他のより有利な住宅ローンへ借り換えをするしかありません。
もちろんそれは固定金利も同様ですね。銀行が「今の固定金利は割高なので引き下げておきますね。」などと言うことは永遠にありません。だとするとやはり、マイナス金利のメリットを享受しようと思えば積極的な借り換えが有効です。
と理屈の上ではその通りですが、住宅ローンの借り換えには2つほど障壁があります。
1つ目は住宅ローンの借り換えにはコストがかかるということですね。コストとしては大きく「登記費用」と「借り換え先の銀行に払う手数料」の2つです。そのコストはざっくりこういった感じでしょうか?
・残高1,000万円の場合:10万円~20万円
・残高2,000万円の場合:20万円~40万円
・残高3,000万円の場合:30万円~60万円
金利の引き下げメリットがこうしたコストを上回らない限りは「費用倒れ」となりますので借り替える意味がありません。
2つ目は住宅ローンの借り換えは・・・「面倒くさい」ということですね(苦笑)。面倒くささの根源は「書類集めの煩雑さ」と「書類記入の負担」ということになるでしょうか。
もちろんそれで100万円を超えるコスト削減になる、ということなら頑張ってやるでしょうけれど、実質的なメリットが10万円ならどうでしょう?1万円なら?
「熱意を失わず借り換えをやり遂げる」ためにも一定の借り換えメリットが必要だということですね。
とは言いつつ上記の通り住宅ローン金利は確実に低下しており、この3月も低下しているわけですから、全体的には借り換えメリットが拡大しているのは間違いありません。
預金者という立場では残念なマイナス金利政策ですが、住宅ローン利用者という立場から見ればこれほどありがたい金融政策はほかにありませんね。
金融政策の趣旨=景気の底上げという観点からも、家計が支払利息を軽減させ、その分を消費に回すことが期待されています。
繰り返しになりますが、預金金利と違い、住宅ローン金利は「放っておいては高いまま」ですから、ぜひこの好機を生かし、借り換えを実施し、毎月の返済額を減らしてみてはいかがでしょうか。
ということで今回の読者アンケートは「マイナス金利政策を受け3月の住宅ローン金利は大きく下がっているようですが、あなたは住宅ローンを借り換えた?」でいきましょう。投票は4月2日まで。
■マイナス金利政策を受け3月の住宅ローン金利は大きく下がっているようですが、あなたは住宅ローンを借り換えた?(4月2日まで)
http://www.old-ginkou.info/modules/xoopspoll/index.php?poll_id=1242
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