まずは前回の読者アンケートを振りかえってみます。前回の「オバマケア改革の失敗やシリア空爆を契機に円高・株安が進んでおり、トランプ相場もターニングポイントを迎えつつあるように見えますが、トランプ相場は続く?続かない?」では・・・
1位:続かない 85%
2位:もう少しだけ続く 15%
となりました。1位は「続かない」で約9割と圧倒的です。筆者も全くの同感です。
オバマケア代替法案の取りまとめに失敗したわけですから、これまでの株高を支えてきた「大型減税」や「大規模な公共投資」の実現可能性も低下しています。とすると金融市場の期待が後退するのも当然ですね。
加えて足元ではシリアや北朝鮮での地政学リスクも高まっておりますので、これも金融市場の懸念を深めているものと思います。
そう考えると「トランプ相場」が続くはずがないと思ってしまうわけですが、ただこれまでの我々日本人の「トランプ恐怖症」はことごとく杞憂に終わりました。とすると今回も予想に反して再び力強く株高に回帰する可能性はゼロではないのかもしれません。
「市場の動きは予測できるものではない」という謙虚さは一定割合必要なのでしょうね。
さらに株高を支える要因として、アメリカの実体経済がかなり調子いいという点は挙げられます。つまり「トランプ相場」が終わっても「業績相場」がその後を引き継ぐことはあり得るわけですね。
また、2015年~2016年にかけて起きた「世界同時株安」の原因の1つとなった中国株式市場がかなり復調してきたことも株高要因に加えても良いかもしれません。中国経済も好調のようですしね。
それでも筆者の見通しとしては「トランプ相場の反動として、しばらく円高・株安が続く」というものですが、果たしてどうなるでしょうか?株安を期待しているわけではありませんが・・・。
ではアンケートへの投票がまだの方は、ぜひ投票をお願いいたします。アンケートは5月12日まで。
〔投票〕https://www.ginkou.info/enquete/?p=79
〔前回のコラム〕https://www.ginkou.info/column/20170412.html
--- Ginkou ---
積立NISA、金融庁基準に適うアクティブ投信はわずか5本…森長官の講演が話題
http://www.quick.co.jp
日本証券アナリスト協会が4月7日に開催したセミナー。金融庁の森信親長官が講演した内容が、金融市場で話題となっています。
というのも、資産運用の世界において「顧客である消費者の真の利益をかえりみない、生産者の論理が横行」している傾向が「顕著に見受けられる」と発言し、現状の資産運用業界の問題点を指摘したからです。
講演の中で森長官は、2018年1月から開始される積み立て型の少額投資非課税制度(NISA)の対象となりうる投資信託について、アクティブ型株式投信でわずか5本、インデックス型株式投信で50本弱にとどまると述べました。
そこでQUICK資産運用研究所は、金融庁が定めた基準に沿って、金融庁が2018年に導入する積み立て型の少額投資非課税制度(NISA)の対象となる投資信託を推定しました。
国内籍・公募の追加型株式投信のうちアクティブ型はわずか5本でした(3月末時点)。さわかみファンドや、ひふみ投信など独立系運用会社が運用し、証券会社や銀行など金融機関を経由しない「直接販売」が中心の投信が4本を占めました。
〔 出典:QUICK 〕
--- Ginkou ---
2018年1月のスタートに向けて静かに準備が進んでいるのが「積立NISA」ですね。本題に入る前に通常のNISAと積立NISAの違いについておさらいしておくと、そもそもNISAとは一定期間・一定金額まで株式や投資信託の利益が非課税となるものですが、通常のNISAの非課税枠はこのようになっています。
・非課税期間 : 5年
・非課税の投資上限額 : 年間120万円×5年=600万円
次に「積立NISA」の非課税枠はこうですね。
・非課税期間 : 20年
・非課税の投資上限額 : 年間40万円×20年=800万円
こちらは非課税期間が20年ということで「長期投資」ニーズにピッタリですね。ただし非課税となる投資額の上限は年間40万円ということで、通常NISAの3分の1となっております。
投資家からすれば、「期間」を取るか「金額」を取るかの二択ということです。
で、その制度設計が進む「積立NISA」について、以下のような条件を満たすアクティブファンドはわずか5本しかないというのが上記記事の趣旨です。
・純資産総額50億円以上。5年以上の運用実績があり、償還までの期間が20年以上か無期限のもの。毎月分配型は対象外。
・販売手数料が上限ゼロ。実質信託報酬(税込み)は投資対象資産が国内の場合は1.08%以下、内外・海外の場合は1.62%以下。
・存続年数3分の2以上で資金流入超過。
この中ではやはり2つ目の「販売手数料ゼロ」&「信託報酬が1.08%or1.62%以下」という条件が厳しいのでしょうね・・・。
ではその「難関」を乗り越えたアクティブファンドは何かと言うと、QUICK社推定とはなりますが以下5本です。
・さわかみ/さわかみファンド(2,943億円)
・ニッセイ/ニッセイ日本株ファンド(741億円)
・レオス・キャピタルワークス/ひふみ投信(492億円)
・セゾン/セゾン資産形成の達人ファンド(406億円)
・鎌倉/結い2011(263億円)
いかがでしょう?どれも個性的かつ、日本の投信業界を変革しようという熱い思いによって立ち上げられたファンドばかりだと思いますが、客観的な基準からもこうしたファンドの魅力が浮彫となるのはすばらしいと思います。
・・・しかし。
公的で極めて規模が大きくなるであろう積立NISAという仕組みにおいて、こうした「インディーズ」ファンドがフィーチャーされてしまうことに違和感を感じないではありません。
たしかにどのファンドも志は素晴らしいものの、多額の資産を預けるべきかと聞かれると躊躇してしまいます。「インディーズ」はやはり「インディーズ」であって、「メジャー」ではありません。たとえば運用資産が1,000万円あって、1割=100万円だけこうしたファンドに回すということなら賛同しますが、1,000万円全額預けると言われると・・・やはり反対するでしょうね。
上記5ファンドは、ニッセイやセゾンを除けば経営体力は恐らくそれほど強固ではなく、何か経営危機が起きれば運用リスクが一気に表面化する可能性があるのではないでしょうか?
また信用力という面でも、大手金融機関と比較すればはるかに低いでしょうから、一度「取り付け騒ぎ」のようなことが起きれば、一気に残高が縮小し運用停止に追い込まれることも考えられます。
そうなることを期待しているわけではありませんが、運用というのは基本的に「性悪説」で考えるべきものであり、その点ではやはりこうした独立系ファンドが運用の「メインディッシュ」になることはあり得ないと思います。あくまで「スパイス」的な位置づけくらいがちょうどよいと思います。
もちろん運用実績が20年や30年以上経過し、ファンドマネージャーや経営者の「代替わり」がスムーズに行われることを確認できれば徐々に信用力は高まっていくものと思いますが、まだ時期尚早と思ってしまうのは筆者だけでしょうか?
やはり「お金」という極めてセンシティブな商材を扱う以上、こうしたアクティブファンドの中核は大手金融機関によって提供されるべきだと思います。
まぁ、筆者は「インデックスファンド」派ですので、アクティブファンドに強い関心があるわけではありませんが・・・。
ちなみに上記ファンドの中では断トツの残高を誇るさわかみファンドですが足元の基準価額は「21,689円」となっており、99年8月のスタートから「2.1倍」になっているということですね!
素晴らしい。
ちなみにこの99年8月24日の日経平均株価はと言うと「18,095円」。意外と高いですね!ITバブル前夜で株価も上昇していたのでしょうか。
でもって本日の日経平均株価は「18,418円」。過去18年でほとんど変わらずというのはどうなのでしょうねぇ(苦笑)。「失われた20年」ですね・・・。
ということで運用成績の面でもさわかみファンドの魅力が理解できるわけですが、しかしそれでも筆者の慎重姿勢は変わりません。何が起こるか分からないのが金融の世界ですからね。
金融庁に対しても、体力面や信用力の点で劣る「インディーズ」ファンドが実力以上にフィーチャーされないよう慎重な制度設計を期待したいと思います。投資家にとっても、金融庁にとっても、そして運用会社にとっても不幸な結果になることが考えられますからね。
そっとしておけば、自分の力でしかるべき時に大輪の花を咲かせるのではないでしょうか。
ということで今回の読者アンケートは「報道によれば来年から始まる積立NISAの対象となるアクティブファンドは5本しかなく、さわかみファンド、ひふみ投信、鎌倉投信といった独立系ファンドで占められるようですが、こうしたインディーズファンドを利用してみたい?」でいきましょう。投票は5月19日まで。
■【読者アンケート】報道によれば来年から始まる積立NISAの対象となるアクティブファンドは5本しかなく、さわかみファンド、ひふみ投信、鎌倉投信といった独立系ファンドで占められるようですが、こうしたインディーズファンドを利用してみたい?(5月19日まで)
https://www.ginkou.info/enquete/?p=83
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