まずは前回の読者アンケートを振りかえってみます。前回の「6月12日に開催予定の米朝首脳会談では、ハッキリとした成果を期待できる?期待できない?」では・・・
1位:成果を期待できない 80%
2位:成果を期待できる 20%
となりました。1位は「成果を期待できない」という冷静な見方で約8割ですね。では昨日の歴史的な米朝会談での共同宣言の中身を振り返るとこういうことでした。
・金正恩委員長は朝鮮半島の完全非核化を約束
・トランプ米大統領は北朝鮮の体制保証を約束
・朝鮮半島で持続的な平和体制を築くため努力
・何十年にもわたる緊張状態や敵対関係を克服する上で大きな意義
・成果実行へ米朝高官で交渉継続
どれも尤もな内容で一定の前進があったように感じますが、ただ今朝の日経新聞によれば専門家の意見としてこういったものが紹介されていました。
「双方に不満が残る内容だろう。明確な形で敵対的な関係を終わらせるという文言は入らなかった。北朝鮮は米国との敵対的な関係を終わらせたいと考えており、こうした文言が盛りこまれなかったのは、米国は現状では北朝鮮を満足させる気がないということだ。トランプ米大統領が記者会見で、北朝鮮がミサイル関連施設を破壊すると約束したと述べたことは注目される。だが、文書に盛りこまれなかったことは米国にとっても満足できないといえる。」
・・・なるほど。
加えてこれまでの北朝鮮の交渉の歴史を踏まえ、非核化に向けての期限や具体的な方法が盛り込まれなかったことから、単なる時間稼ぎであるという指摘も多いですね。
実際、米中や日米の貿易問題に関する取り組みを見ても全く具体的な進展はないわけで、トランプ政権に対してこうした時間稼ぎは容易なのだとすると「結局、何の成果もなかった」と結論づけられる可能性は十分あります。
「完全非核化」をゴールとすると確かにその通りですが、他方で北朝鮮が結局、核を放棄する気もなければ開発を中止する気もなく、アメリカも経済制裁を撤回する気はないのだとすると、「会談をしても失うものは何もない」と感じるのですがいかがでしょうか?
そのように会談や共同宣言への期待値をゼロにしてみると、とりあえず両首脳が直接会っただけでも緊張緩和に向けて意味があったような気がします。お互い「殺し合う気はない」と分かるだけでも、偶発的な衝突から全面的な戦争に至る可能性が大幅に減ることになります。
筆者は引き続き「期待値ゼロ」で、今後の朝鮮半島の緊張緩和への取り組みをウォッチしていきたいと思います。
ではアンケートへの投票がまだの方は、ぜひ投票をお願いいたします。アンケートは6月30日まで。
〔投票〕https://www.ginkou.info/enquete/?p=391
〔前回のコラム〕米朝首脳会談は成果を期待できる?できない?
--- Ginkou ---
米中間選挙2018 共和、下院死守へ猛追
https://www.nikkei.com
11月の米議会中間選挙に向け、トランプ大統領率いる与党・共和党が劣勢の巻き返しに動いている。堅調な景気を背景にトランプ氏の支持率が持ち直し、野党・民主党の優位には陰りがみえてきた。焦点の下院での過半数確保を巡る攻防は、今後さらに激しさを増しそうだ。米世論の分断が続くなか、有権者はトランプ政権にどんな審判を下すのか。
中間選挙は上院(定数100)で35議席、下院(同435)は全議席が改選対象。現在、共和・民主両党は各選挙区の公認候補を決める予備選を進めている。予備選は夏場まで続き、本選の顔ぶれが固まるにつれ、選挙ムードが高まっていく。
最大の焦点は下院での共和党の過半数維持だ。現状、共和党は235議席と過半数を17上回る。上院は共和党が51議席、民主党が49議席を握る。
下院で共和党が勝てば、保護貿易や移民排斥といった「米国第一」路線の実現に弾みがつく。逆に民主党が奪回すれば、政策は停滞し、2020年の大統領選出馬に黄信号がともる。くすぶるロシア疑惑などの情勢次第では、大統領弾劾の可能性も出てくる。
民主党に強く吹いていた追い風はここにきて変化の兆しがうかがえる。米政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティクス(RCP)の5月末時点の調査では、中間選挙で予定する投票先は民主党が43.0%で、共和党は39.8%。昨年末の13ポイント差から共和が大きく巻き返している。ロイター通信の5月中旬の調査では、中間選挙の投票先で共和党が民主党を初めて上回った。RCPの専門家は「民主党の優勢からデッドヒートに変わりつつある」と指摘した。
トランプ氏の支持率も底打ちが鮮明だ。RCPの調査で5月末時点の支持率は43.6%と昨年末の37%から上昇。堅調な景気で失業率は18年ぶりの低水準で推移し、大型減税の効果も浸透しつつある。史上初の米朝首脳会談の開催にも好意的な見方が多い。
〔 出典:日本経済新聞 〕
--- Ginkou ---
上記米朝会談についてはその評価が分かれそうですが、筆者のように前向きに捉える方々にとっては悩ましい点が1つあります。「トランプ大統領を支持するのかどうか」という点ですね。
「アメリカの大統領」に何を期待するのかによってその答えは変わってきそうです。品格を求めるとすれば、ウソつきで、傲慢で、自分のことしか考えないトランプ氏は「最低の大統領」ということになります。
最近で言うとエルサレムの首都認定はひどい決断でしたね。結果的に何十人もの方が抗議活動で亡くなったわけですから、「人殺し」とさえ言っていいのかもしれません。
経済政策においても、異例の長期間好景気が続いている中で大規模な減税を決めたり、失業率が歴史的な低水準にある中で製造業の雇用維持に努めたりと、総じてトンチンカンな印象をぬぐえませんね。
政権運営面でも、優秀と目される閣僚を次々とクビにするなど全く安定しません。
そのように考えると素直にトランプ氏を支持したいとは思えませんが、しかし繰り返しになりますが、今後の朝鮮半島の緊張緩和と平和の進展を祈る立場で言うと、これほど頼りになる大統領はいない気がします。
結局のところトランプ氏は「ジャイアン」ということですね。嫌われ者ですが、味方につけると最強です。
もちろん借りを作るとそれはそれで面倒なことになるのでしょうけれど、少なくとも北朝鮮問題では利害が一致しておりますのでその心配はなさそうです。
仮に北朝鮮がICBM廃棄に合意した場合、トランプ大統領が「本土を直接攻撃されるリスクはなくなった」と満足してしまうと、日本とアメリカの利害が一致しなくなってきますが・・・。
さてそのジャイアン氏の2年後の大統領選挙での再任を占う前哨戦とも言えるのがこの秋に予定されている中間選挙です。アメリカの上院議員のうちの3分の1、下院議員全員が改選となるわけで、ポイントはやはり下院でトランプ大統領≒共和党が過半数を維持できるかどうかですね。現状は共和党が235議席と過半数を17議席上回っているようです。
では気になる共和党の支持率はと言うとこうなっています。
この数ヶ月、民主党の支持率は低下傾向にある一方で、共和党の支持率は堅調ですね!両党の差は着実に狭まりつつあります。
加えて前回の大統領選挙で良く分かったように、トランプ氏の人気は世論調査には素直に反映されません。その点では実質的にはすでに共和党の支持率が民主党を上回っている可能性があります。
そのように考えると、エルサレムの首都認定や大型減税など首をかしげたくなるような意思決定も、「中間選挙に向けて支持率獲得」という縦軸で見れば「効果的な手だった」と言えるのかもしれませんね。
のび太くんと同じように平和主義者の筆者からすれば、安全保障のためだけにトランプ大統領を支持するのは憚られるものの、今は「他に選択肢がない」ということになるのでしょうね・・・。
では今回の読者アンケートは、「11月の中間選挙に向けてトランプ大統領≒共和党の支持率が上昇傾向にあるようですが、トランプ大統領を支持する?支持しない?」でいきましょう。投票は7月13日まで。
■【読者アンケート】11月の中間選挙に向けてトランプ大統領≒共和党の支持率が上昇傾向にあるようですが、トランプ大統領を支持する?支持しない?(7月13日まで)
https://www.ginkou.info/enquete/?p=396
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