執筆者: ginko 発行日付: 2016-3-19
3月の、世界各国の主要株式市場の株価収益率(PER)一覧を更新しました。
<1.株価収益率(PER)とは?>
株価収益率(PER)って何?という人にご説明しておきますと、株価が、その会社の利益の何倍くらいになっているか、という株価の割高・割安を示す尺度です。ある会社の一株あたりの利益が1万円として株価が20万円なら、20万円÷1万円=20倍、というわけですね。言い換えれば、「株価は利益の何年分か」を表していると言えます。株価収益率が20倍なら「利益の20年分の株価」ということですね。
で、なぜこれが大事かというと、株価が割高か割安か、全てこれだけで説明できてしまうような万能のモノサシだからです。歴史上、たくさんのバブルがありましたが、多くは株価収益率が40倍とか60倍とか80倍という、利益額から見れば気の遠くなるような株価になったんですね。
もちろん当時は、その「高い株価収益率」を正当化するもっともな理屈がたくさんあったのでしょうけれど、結果的にはどんなバブルもはじけ、高い株価収益率は「重力」に負けて低下し(時には破滅的なスピードで)、概ね15倍前後に落ち着いています。株価収益率は、特に株価が割高になっていないかどうか、目安としては「20倍を超えていないかどうか」チェックすればいいと思います。
一方で例えば15倍未満の株価収益率は相対的に割安といえますが、割安には割安な理由があるので、飛びつくのはオススメしません。あくまで「割高」のチェックに用いると良いでしょう。
<2.今月の株価収益率>
3月の世界の株価収益率の推移はこんな感じです。
2月の株価収益率の平均は前月と比較して上昇しました。先月の単純平均は12.78倍で、今月は13.89倍ということですね。
上がったということは株価が「割高」になったということになります。株価が割高となる要因は以下の通りです。
・株価が上がる
・企業収益が減る
ここでいつものように最近の株価の動きをチェックしておきましょう。
■日経平均株価(6ヶ月)
■日本を除く、世界の先進国の平均株価(円建て:6ヶ月)
■世界の新興国の平均株価(円建て:6ヶ月)
全体的に回復傾向にありますね!特に新興国の株価がようやく回復してきた点が印象的です。
いつものように具体的な数値をチェックするとこのようになっています。
・日本 :上がる(15,967円→16,724円)
・先進国:上がる(485ポイント→513ポイント)
・新興国:上がる(688ポイント→758ポイント)
やはり全て上昇していますね!
そうしたわけで、今月PERが上昇した理由というのは・・・1つ目の要因、つまり「株価が上昇したから」ということです。
これまたいつものように変動率を算出するとこうなります。
・日本 :+5%
・先進国:+6%
・新興国:+10%
やはり新興国の上昇傾向が顕著ですね。ではなぜ今月は世界の株価がこんなに好調なのでしょうか?
それを探るためにはまずこれまでの株価下落要因を思い出してみたいと思います。先月もご案内したように以下3つですね。
1.アメリカの利上げ
2.中国経済の減速
3.原油価格の下落
この1ヶ月の中で特に大きく変化したものはと言えばやはり1つ目の「アメリカの利上げ」ですね。アメリカは好調な経済を背景に昨年冬から利上げを開始し、今年も年4回程度の利上げが予想されていました。
このアメリカの利上げは特に新興国の株価と資源価格の下落に大きく影響しています。
米ドルの金利が高まれば、これまで運用機会を探って新興国に流れ込んでいた投資マネーがアメリカに戻っていくと指摘されておりましたが、実際、新興国の株価が大きく下落したところを見るとそうしたメカニズムがあるのは間違いなさそうです。
加えて利上げをした通貨は高くなるのが通例で、実際、米ドルは上昇を続けてきたわけですが、それは米ドルで取引される資源価格が下落することを意味します。最近の原油価格下落の要因の1つがこのアメリカの利上げであるのはこれまた間違いなさそうです。
そのように恐らく想定以上のネガティブインパクトをもたらしたアメリカの利上げですが、最近ではアメリカ国内の景気指標についても弱い数字のものが出てくるなど前提条件が崩れてきており、先日のFOMCでは「年2回の利上げ」ペースが示唆されました。
これまでの「年4回ペース」が「年2回ペース」なわけですからアメリカの利上げ姿勢が後退しているということですね。となるとこれまでとは逆回転の動きが起こるわけですから、結果として以下のような動きが出てくることになります。
・新興国株価の上昇
・ドル安(=円高)
・資源価格の回復
すでに新興国株価は見ましたので、残るドル円相場と原油価格の推移をチェックするとこうなっています。
・ドル円相場
・原油相場
確かに見事に円高ドル安が進む一方で、原油価格が回復していますね!
結局のところ世界経済はアメリカの金利に踊らされているだけ、と言えるのかもしれません。
なお、日本の個人投資家にとって悩ましいのは株価上昇はポジティブである一方、円高ドル安はネガティブであるということですね。特に昨今の日本円は「円安バブル」の様相を呈しておりましたので、かなりの反動が出てくる可能性があります。十分お気を付けください。
ちなみにこれまでの株価下落要因の話に戻ると上記の通り「アメリカの利上げ」や「原油価格の下落」についてはある程度改善したわけですが、他方全く改善していないのが「中国経済の減速」ですね。今のところ中国経済に関しては明るいニュースが1つも聞こえてきません。
ギリシャの債務危機のように何となく忘れられていく可能性はゼロではないものの、とにかく中国経済は規模が大きいだけにそのハードランディング・リスクは甚大です。
投資家にとってはこの中国リスクをどうとらえるかが重要な「運命の分かれ道」ということになりそうです。筆者は真ん中より少し悲観的ですが、読者の皆さんはいかがでしょう?
いつも投資には慎重な判断が必要ですが、特に今は、より慎重な姿勢が求められているということですね。
では個別の株価収益率=PERはこのようになっています。
今月の割高市場に、ついにアメリカ/ナスダック市場が復活してきました。最近の株価上昇を象徴する動きと言えそうです。
次の15倍以上20倍未満のゾーンですが、南アフリカ/全株、インド/MSIS市場、日経平均、日本/JASDAQ市場、イギリス/FT100、アメリカ/NYダウとなっています。
もちろん株価は割高の時よりも割安の時に購入した方がいいわけで、これから株式投資をご検討の方はこうしたPERの状況にも注意しながら、なるべく割高な市場・タイミングは避けて投資先を選別していただければと思います。
だからと言って「低ければいい」というものではないのは申し上げた通りですが。
各株価指数のPERの具体的な推移はこちらをご参照ください。
>>>世界各国主要株式市場の株価収益率(PER)推移はこちら
https://www.ginkou.info/per/index.html
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