5月の、世界各国の主要株式市場の株価収益率(PER)一覧を更新しました。
<1.株価収益率(PER)とは?>
株価収益率(PER)って何?という人にご説明しておきますと、株価が、その会社の利益の何倍くらいになっているか、という株価の割高・割安を示す尺度です。ある会社の一株あたりの利益が1万円として株価が20万円なら、20万円÷1万円=20倍、というわけですね。言い換えれば、「株価は利益の何年分か」を表していると言えます。株価収益率が20倍なら「利益の20年分の株価」ということですね。
で、なぜこれが大事かというと、株価が割高か割安か、全てこれだけで説明できてしまうような万能のモノサシだからです。歴史上、たくさんのバブルがありましたが、多くは株価収益率が40倍とか60倍とか80倍という、利益額から見れば気の遠くなるような株価になったんですね。
もちろん当時は、その「高い株価収益率」を正当化するもっともな理屈がたくさんあったのでしょうけれど、結果的にはどんなバブルもはじけ、高い株価収益率は「重力」に負けて低下し(時には破滅的なスピードで)、概ね15倍前後に落ち着いています。株価収益率は、特に株価が割高になっていないかどうか、目安としては「20倍を超えていないかどうか」チェックすればいいと思います。
一方で例えば15倍未満の株価収益率は相対的に割安といえますが、割安には割安な理由があるので、飛びつくのはオススメしません。あくまで「割高」のチェックに用いると良いでしょう。
<2.今月の株価収益率>
5月の世界の株価収益率の推移はこんな感じです。
5月の株価収益率の平均は前月と比較して上昇しました。先月の単純平均は13.90倍で、今月は14.21倍ということですね。
上がったということは株価が「割高」になったということになります。株価が割高となる要因は以下の通りです。
・株価が上がる
・企業収益が減る
ここでいつものように最近の株価の動きをチェックしておきましょう。
■日経平均株価(6ヶ月)
■日本を除く、世界の先進国の平均株価(円建て:6ヶ月)
■世界の新興国の平均株価(円建て:6ヶ月)
見事にどの指数も上昇していますね!具体的な数値をチェックするとこのようになっています。
・日本 :上がる(18,335円→19,884円)
・先進国:上がる(562ポイント→601ポイント)
・新興国:上がる(864ポイント→935ポイント)
やはり上がっています。どれも1割前後上昇しているでしょうか?ということでそれぞれの上昇幅をチェックしてみるとこうなります。
・日本 :+8.4%
・先進国:+6.9%
・新興国:+8.2%
1割というのは言い過ぎでしたがそれでもかなり上昇していることが分かります。中でも日本株の上昇幅が一番大きいわけですね。すばらしい!
なお、この3指数が同時に上がるということは為替相場が円安になっている可能性が高く、こちらもチェックするとこうなります。
■ドル円相場
言わずもがなですが円安ですね・・・ざっくり109円→114円の円安ということでしょうか?とすると約4.6%の円安ということですから、円安効果が「半分以上」ということですね。
円安ということはドル高なわけですが、これまでの「円高ドル安」の流れがあっさり「円安ドル高」へと変わった背景には、最近のリスク要因がこの数週間で大きく好転したことが挙げられます。先日のコラムでもご案内しましたが概ねこういった変化が起きたということです。
・トランプ政権の政策実現能力に対する懸念 → オバマ改革法案の再提出により後退
・シリア、北朝鮮での地政学リスクの増大 → 新しい動きがなく沈静化
・フランス大統領選挙で極右候補が勝利する可能性 → 中道候補の勝利により消滅
こうしてみると主要なリスクが一気に片付いたわけですから、株式相場が強気になるのも当然かもしれません。実体経済自体は相変わらず好調ですしね。
と言うわけでアメリカ株はこうなっております。
■アメリカ株(S&P500)
右肩上がりであり、最高値を更新している状態ですね。市場が強気であることがよく分かります。
今度は新興国をチェックしてみると、主要な新興国の株価はこうなっています。
■中国株(上海総合指数)
■インド株(MSIS)
■ブラジル株(ボベスパ)
■ロシア株(MOEX)
政治リスクが根深いロシアを除けば、どれもこれまた右肩上がりですね!知らない間に世界の株式市場は一気に「リスクオン=強気モード」になったということです。
・・・もはや「分散」も何もないですね。上昇する時はみんな一緒に上昇し、下落する時はみんな一緒に下落する傾向がどんどん強まっている気がします。
そうしたわけで筆者の予想に反して一気に上昇に転じた世界の株式市場ですが、このまま上昇を続けるかと言うとそれは難しいかもしれません。というのもトランプ大統領がFBIのコミー長官をいきなりクビにし、新たな政治スキャンダルとなっているからです。
単に「気にくわないからクビにした」「言うことを聞かないから更迭した」ということであっても問題ですが、噂されているようにトランプ大統領とロシアとの不適切な関係が理由ということであれば、トランプ大統領自身が失職する可能性が出てきます。
「その方がいい」と思っている方も少なくなさそうですが、少なくともこれまでの「大規模減税」や「大型公共投資」に対する期待はしぼむことになりますので、やはり株価には大きなショックとなりますね。
これまでの数々の懸念を振り払って、驚異的な粘りを見せてきた「トランプラリー」ですがいよいよ終焉を迎えるのでしょうか?要注意です。
もちろん株価が下がれば株価収益率=PERも下がり、つまり株価が「割安」になるということですからチャンスという考え方もできるかもしれませんが。
なお個別の株価収益率=PERはこのようになっています。
今月の割高市場にはアメリカ/ナスダック市場のみとなっています。
次の15倍以上20倍未満のゾーンですが、アメリカ/NYダウ、日経平均、インド/MSIS、日本/JASDAQ、イギリス/FT100ですね。ブレグジットのさなかにあるイギリスの株価の調子がいいというのは意外な気もします。
それはともかく、もちろん株価は割高の時よりも割安の時に購入した方がいいわけで、これから株式投資をご検討の方はこうしたPERの状況にも注意しながら、なるべく割高な市場・タイミングは避けて投資先を選別していただければと思います。
だからと言って「低ければいい」というものではないのは申し上げた通りですが。
各株価指数のPERの具体的な推移はこちらをご参照ください。
>>>世界各国主要株式市場の株価収益率(PER)推移はこちら
https://www.ginkou.info/per/index.html
思い立ったら、今すぐこの場で資料請求!
銀行.info メインメニュー