8月の、世界各国の主要株式市場の株価収益率(PER)一覧を更新しました。
<1.株価収益率(PER)とは?>
株価収益率(PER)って何?という人にご説明しておきますと、株価が、その会社の利益の何倍くらいになっているか、という株価の割高・割安を示す尺度です。ある会社の一株あたりの利益が1万円として株価が20万円なら、20万円÷1万円=20倍、というわけですね。言い換えれば、「株価は利益の何年分か」を表していると言えます。株価収益率が20倍なら「利益の20年分の株価」ということですね。
で、なぜこれが大事かというと、株価が割高か割安か、全てこれだけで説明できてしまうような万能のモノサシだからです。歴史上、たくさんのバブルがありましたが、多くは株価収益率が40倍とか60倍とか80倍という、利益額から見れば気の遠くなるような株価になったんですね。
もちろん当時は、その「高い株価収益率」を正当化するもっともな理屈がたくさんあったのでしょうけれど、結果的にはどんなバブルもはじけ、高い株価収益率は「重力」に負けて低下し(時には破滅的なスピードで)、概ね15倍前後に落ち着いています。株価収益率は、特に株価が割高になっていないかどうか、目安としては「20倍を超えていないかどうか」チェックすればいいと思います。
一方で例えば15倍未満の株価収益率は相対的に割安といえますが、割安には割安な理由があるので、飛びつくのはオススメしません。あくまで「割高」のチェックに用いると良いでしょう。
<2.今月の株価収益率>
8月の世界の株価収益率の推移はこんな感じです。
8月の株価収益率の平均は前月と比較してわずかに上昇しました。先月の単純平均は14.39倍で、今月は14.45倍ということですね。
わずかでも上がったということは株価が「割高」になったということになります。株価が割高となる要因は以下の通りです。
・株価が上がる
・企業収益が減る
ここでいつものように最近の株価の動きをチェックしておきましょう。
■日経平均株価(6ヶ月)
■日本を除く、世界の先進国の平均株価(円建て:6ヶ月)
■世界の新興国の平均株価(円建て:6ヶ月)
んん?足元では少し低下しているように見えますね?具体的な数値をチェックするとこのようになっています。
・日本 :下がる(20,119円→19,702円)
・先進国:下がる(615ポイント→607ポイント)
・新興国:下がる(971ポイント→968ポイント)
やっぱり下がっていますね・・・とすると、「株価が下がっているのに株価収益率=PERが上昇している」わけですから、「分母である企業収益が減っている」ことが示唆されますが、ただ世界経済が好調を維持している点を踏まえればそれもなさそうです。
とすると・・・この矛盾はどう説明したらいいのでしょうか?
なお、この先進国株・新興国株の指数は円建てですので為替相場の影響を強く受けます。というわけでその答えを探るために為替相場をチェックするとこうなります。
■ドル円相場
年末年始をピークにじわじわと円高ドル安が進んでおりますが、過去1ヶ月で見てもざっくり113円→110円の円高といった感じです。つまり外貨資産に対しては「-2.7%」程度の下落要因ということですね。
ただ上記円建ての先進国株・新興国株はそれほどは下がっていません。とすると「株式相場そのものは堅調である」ことが示唆されます。
ここから推測されることは「世界の株式相場は堅調であるけれど、為替が円高になったため、円建ての株式指数が下落した」ということですね。
それなら(円建ての)株価は下がっているのに、(現地通貨建ての)株価収益率=PERは上昇する、ということが起こりえます。
ということで具体的に世界の株価動向をチェックすると、まずアメリカ株はこう。
■アメリカ株(S&P500)
1ヶ月前と比較すると多少下がっているかもしれませんが、全体的には右肩上がりであり好調を維持していると言えます。実際、NYダウの株価収益率も先月の17.87倍から18.06倍に上昇しています。
次に新興国をチェックしてみると、主要な新興国の株価はこうなっています。
■中国株(上海総合指数)
■インド株(MSIS)
■ブラジル株(ボベスパ)
■ロシア株(MOEX)
過去1年では驚くほどまちまちですが、過去1ヶ月ではインド株を除き概ね上昇していると言えそうです。そのインド株も全体的には右肩上がりを維持していますので相場が崩れているわけではありません。
やはり今月、株価が下がっているように見えたのは円高の影響で、実態としては株価収益率が示すように堅調だということですね。
ちなみに株価を細かく見れば、先週世界的にガクっと下がったことが分かります。これは皆さんよくご存知の通り、北朝鮮の核ミサイル問題がヒートアップしたからですが、別のコラムでもご案内したようにこうした極端なリスクを株価に織り込むのは困難ですね。
とすると早晩影響は薄れていくのではないかと思っていたわけですが、実際株価はその後回復基調にあります。
株高・ドル高・金利高の「トランプラリー」が完全に収束してもなお株価が堅調なのは心強い限りですが、恐らくこれは好調な実体経済を背景に「業績相場」入りしたのではないかと感じるのですがいかがでしょうか?
アメリカでの自動車ローン問題がクローズアップされるなど、今後の株価についてなかなか楽観的にはなれませんが、1日でも長く現在の堅調さが続くことを祈りたいと思います。
なお個別の株価収益率=PERはこのようになっています。
今月の割高市場はアメリカ/ナスダック市場とインド/MSISになっています。
次の15倍以上20倍未満のゾーンですが、アメリカ/NYダウ、日経平均、南アフリカ/全株、イギリス/FT100ですね。
株価は割高の時よりも割安の時に購入した方がいいわけで、これから株式投資をご検討の方はこうしたPERの状況にも注意しながら、なるべく割高な市場・タイミングは避けて投資先を選別していただければと思います。
だからと言って「低ければいい」というものではないのは申し上げた通りですが。
各株価指数のPERの具体的な推移はこちらをご参照ください。
>>>世界各国主要株式市場の株価収益率(PER)推移はこちら
https://www.ginkou.info/per/index.html
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