まずは前回の読者アンケートを振りかえってみます。前回の「2018年、日銀が長期金利の誘導目標を現行の0%程度から0.2%前後へ引き上げるという見立てがジワジワ広がっているようですが、あなたは今年の長期金利は上昇すると思う?低下すると思う?」では・・・
1位:変わらない/0.1%未満 67%
2位:上昇する/0.3%~0.4% 33%
となりました。1位は「変わらない/0.1%未満」で約7割です。ただ一方で残り3割の方は「上昇する」と考えておられるわけで、この「7:3」という割合は今の市場の雰囲気と近しい気もします。つまり、一定割合で「今年、日銀が長期金利を引き上げるだろう」という観測が広がっているということです。
実際、経済ニュースを見ると市場関係者の多くが「長期金利は0.2%~0.5%程度上昇する」とコメントしており、素人としてはもはや「今年の長期金利上昇は既定路線なのかな?」という気すらしてきます。
ただ一方、昨日の日銀の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田総裁はそうした金利引き上げ観測を強く否定しています。こういったやり取りが報道されています。
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問 長短金利操作を見直す可能性は。
答 我が国では景気が緩やかに拡大している一方、物価は弱めの動きが続いている。物価安定目標の実現まで距離があることを踏まえると、(金融緩和を縮小する)出口のタイミングやその際の対応を検討する局面には至っていない。引き続き強力な金融緩和を粘り強く続けることが日本経済にとって必要だ。
問 予想物価が上昇を続けた場合、強まり過ぎる緩和度合いを調整するために金利を引き上げることはあり得るか。
答 予想物価上昇率が上がっていくと、自然利子率が一定であっても、実質金利の低下で景気刺激効果が強まるのはその通り。あくまで金融政策は2%の物価上昇率をできるだけ早期に実現するという目標との関係で行っている。予想物価上昇率が上がったから直ちに金利を調整する必要があるとは全く考えていない。
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内容としてはこれまでの黒田総裁の発言と変わりはありませんが、上記の通り市場が金利引き上げを織り込む中での発言ですので、より印象深いですね。筆者の中の「利上げ観測」はかなり後退しました(笑)。
なお、足元での長期金利上昇の要因の1つに、日銀が国債の買い入れ額を減らしたことが挙げられますが、その点についても以下のように回答しています。
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問 国債買い入れオペの減額で円高が進行した。今後の減額が難しくなったか。
答 為替の動向はもちろん十分注視しているが、オペの金額自体は、適切なイールドカーブ(利回り曲線)を形成するという観点から、国債の需給環境や市場の動向などを踏まえて実務的に決定される。日々の国債買い入れオペの運営が先行きの政策スタンスを示すことはない。
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これまたハッキリ否定しております。
もちろん予想通りの回答ではあるのですが、しかし明確に否定してくれるとモヤモヤが晴れスッキリします。
ただそれは預金者としては「今年の金利上昇を諦める」ということですから、もちろん残念な気持ちはありますが、その責めは日銀ではなく、ぬか喜びさせた市場関係者が負うべきなのでしょうね。「ぬか喜び」が確定したわけではありませんが・・・。
しかしいつも思いますが、黒田総裁のコメントは的確かつ必要十分で安定していますね。今回のコメントを聞いて「やはり今年、日銀が金利を引き上げる気だな」と感じた方はまずいないと思います。資質という観点からすれば今年4月に黒田総裁の任期が切れるわけですが、「再任」が期待されるのでしょうね。金利上昇だけを期待するなら別の総裁がいいのでしょうけれど。
ではアンケートへの投票がまだの方は、ぜひ投票をお願いいたします。アンケートは2月17日まで。
〔投票〕https://www.ginkou.info/enquete/?p=295
〔前回のコラム〕2018年、金利は上がる?下がる?
--- Ginkou ---
仮想通貨 国際規制の動き 独仏、G20で提案へ 金融システムに懸念
https://www.nikkei.com/
「我々は同じ懸念を抱いており、ビットコインを規制しようという考えで一致した」。フランスのルメール経済・財務相は18日、パリでドイツのアルトマイヤー財務相代行と共同会見し、仮想通貨の国際的な規制を呼びかける方針を明らかにした。アルトマイヤー氏も「市民に危険を説明し、規制によって危険を減らす」と息を合わせた。
独仏は3月19~20日にアルゼンチンで開くG20会合に共同の規制案を提案する構えだ。ルメール氏は以前から仮想通貨規制の必要性を語っており、専門家らに具体的なやり方を研究させている。金融当局の監視が行き届かず、資金の流れを捕捉しきれないことを懸念しているようだ。
現時点では独仏とも具体案を示していないが、金融当局内でひとつのアイデアとして取り沙汰されるのが、仮想通貨を株式や国債と同じ「有価証券」と位置づけて規制を強めることだ。日本でいえば金融商品取引法をビットコインなどに適用することになる。
日本は17年に改正資金決済法を施行して、仮想通貨を「支払い手段」として認め、取引所の登録制や顧客資産の分別管理などを義務付けた。これが金商法となると、格段に厳しい規制がかけられる。たとえば仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)の際に詳しい情報開示を求められたり、販売や仲介を手掛ける業者に制約がかかったりして、市場が冷え込む可能性が高まりそうだ。
独仏などは仮想通貨がマネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金の保存に使われているとの疑念を深めており、悪用防止を目指す議論が先行してきた。15年にはマネロン対策に取り組む国際組織の金融活動作業部会(FATF)が、取引所の登録・免許制や本人確認の義務付けなどを提言した。
各国の金融当局は金融システムへの影響も無視できないとみている。ビットコインの激しい値動きが不測の資金流出につながったり、企業などが独自の仮想通貨をネット上で不特定多数に販売するICOが資本市場をゆがめたりするリスクが取り沙汰されている。
いち早く厳しい規制に乗り出したのが中国だ。17年秋にICOを禁止したほか、国内の取引所も閉鎖した。ただ、一部の取引所が海外に拠点を移すなど規制が尻抜けになっていた面があり、規制の再強化を進めている。
米証券取引委員会(SEC)はビットコイン先物を使った上場投資信託(ETF)の認可に慎重な姿勢を示している。ロシアは仮想通貨を規制する新法案を準備中だ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの廉了氏は「仮想通貨の取引規模拡大で金融システムにショックを与える不確実性が強まっている。独仏は投資家保護につながる規制導入を議論する時期に来たと考えているのだろう」と話す。
※抜粋
〔 出典:日本経済新聞 〕
--- Ginkou ---
これまで何度取り上げたか分かりませんが、やっぱり気になってしまうのがビットコインですね(苦笑)。
テレビでもたびたび取り上げられているようですし、筆者の周りの友人・知人も意外と購入しているようで、裾野の広がりを感じます。
ただ一方で、実態ほど「過熱感」を感じないのは、筆者が普段接触するメディア=新聞や報道番組、ネットニュースでは抑制的に報じられていたからなのかもしれません。
報道の姿勢としてはもちろんそれでいいのでしょうけれど、筆者の感覚がますます一般市民のものと乖離しているのだとするとちょっと怖いような気もします。ワイドショーでも見た方がいいのでしょうか・・・。
それはともかくとして本題のビットコインですが、いつもご案内している価格推移はこのようになっています。
昨年12月以降、大幅に下落しているわけですね。ピークは240万円程度のようですから足元の120万円前後の価格はちょうど「半値」ということになります。
これまで何度も下落してきたビットコインですが、今まで「半値」まで下がったことはないと思いますので、「これまでと違う」局面に入ったことはありません。チャートだけを見れば間違いなく「バブル崩壊」と言えますが、いよいよビットコイン・バブルは終息していくのでしょうか?
未来のことは誰にもわかりませんが、先日のメルマガでご案内したようにバブルの賞味期限は一般的に1~2年であることに加え、バブルにとどめを刺すのは金融当局の規制である場合が多いことを勘案すると、ビットコイン包囲網は確実に狭まっているように感じます。
上記記事の通り、3月のG20でビットコイン=仮想通貨に対する国際的な規制の枠組みが話し合われるようですのでこれが「最後のピース」となるかもしれません。筆者は詳しくはないですが、ビットコインのこれまでの上昇を正当化する「理屈」があったはずで、それらの「理屈」のいくつかがこうした規制の動きで否定されてしまうのではないでしょうか。
そもそも筆者が考える限りビットコインが継続的に上昇する理由は見当たりませんからね。
もちろん、発行枚数に上限があり、みんなが求めれば求めるほど価格が上昇していく理屈は分からなくはありませんが、しかしそれはみんなが購入した後、手放さずに保有しておくことが前提となっており、決済手段として買って売ってを繰り返す限り買った分だけ売りに出るわけで、急激な価格上昇は起こりにくいですね。
逆に優良な決済手段となりえるはずのビットコインにとって価格はむしろ安定している方が望ましく、その点では中長期的なビットコインの利用拡大のためには投機的な動きはここで完全に否定されておいた方が良さそうです。
資産としての裏付けが全くなく、「上昇するから」という理由で買いが買いを呼ぶ展開というのは、びっくりするほど純粋なバブルだったわけですが、本当にここで弾けてしまうのでしょうか?注目です。
ただ一方でこの滅多にない経験を、「あれはバブルだったね」という一言で終わらせてしまうのはもったいない気がします。こうした急激な価格上昇に伴い「バブル長者」が生まれる状況で、人々がどのようにふるまい、自分がどのように感じたのか、そして投資すべきだったのか、投資しない方が良かったのか、そうした点も含めてしっかり自分の経験値にできれば、次にバブルが発生した時に適切に対処できますね。
もし世の中に「投資学」のような学問があるとすれば確実に教科書に載る題材でしょうから・・・筆者も刮目してこのビットコインバブルの顛末を見届けたいと思います。
なお再度強調しておきたいのは、いくら価格が下がったとしても決済手段としてのビットコインが否定されるわけではありませんので、「ビットコインバブル崩壊」=「ビットコインの終焉」ではありません。逆に言えばビットコインがサービスとして永続的に生き残っていったとしてもビットコイン「バブル」が続く理由にはならないということです。
というわけで今回の読者アンケートは、「現在、ビットコインの価格は120万円程度でピークから半値に下がっている状況ですが、今年ビットコインは上がると思う?下がると思う?」でいきましょう。投票は2月24日まで。
■【読者アンケート】現在、ビットコインの価格は120万円程度でピークから半値に下がっている状況ですが、今年ビットコインは上がると思う?下がると思う?(2月24日まで)
https://www.ginkou.info/enquete/?p=300
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