まずは前回の読者アンケートを振りかえってみます。前回の「安倍首相は日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を進めていく考えで、このまま行けば歯舞・色丹の2島返還で妥協することになりそうですが、支持する?支持しない?」では・・・
1位:歯舞・色丹の2島返還を支持しない 55%
2位:歯舞・色丹の2島返還を支持する 36%
3位:一概には言えない 9%
となりました。1位は「歯舞・色丹の2島返還を支持しない」となりました。約6割ですね。「昭和」の教育を受けた者としては、「北方四島は日本固有の領土」と習ってきましたので当然の回答と思います。
ただ一方で一時、択捉島と国後島を放棄した歴史的な背景や、ロシアに実効支配されてから長い月日が経っていることを勘案すれば北方四島がそのまま返ってくる可能性はゼロです。
とすると現実問題としては
1.あくまで四島返還を主張したまま平行線をたどるか(≒四島は返ってこない)
2.日ソ共同宣言に記載されている二島に絞り込むか
のどちらかの選択ということになります。個人的には領土問題はどこの国でも1つや2つ抱えているものであり、また仮に二島が返還されたところで大した国益にはならない、むしろ負担になりそうであることを踏まえれば、あえて理想論の1でも良いような気がしますが、現実論としての2も理解はできます。
では世論の受け止め方はどうかと言うと、日経新聞の調査によればこうなっています。
・2島を先に返還:46%
・4島一括返還:33%
・2島だけの返還:5%
・返還を求めない、その他:16%
パっと見れば「2島返還」に46%の方が賛同されているわけですが、ただあくまで「先に」ということで残りの2島は諦めていないわけですね。その点では実質的に「4島返還」と考えられます。「2島だけ」は5%にとどまっています。
微妙に選択肢が違うので単純比較はできませんが、むしろ当サイトのアンケート回答者の方の方が「現実的」と言えるのかもしれませんね。
ではアンケートへの投票がまだの方は投票をお願いいたします。アンケートは12月21日まで。
〔投票〕https://www.ginkou.info/enquete/?p=506
〔前回のコラム〕北方領土、2島返還で妥協すべき?
--- Ginkou ---
「カルロス・ゴーン氏は無実だ」 ある会計人の重大指摘
https://gendai.ismedia.jp/
新聞報道によれば、日産自動車の2011年3月期から2015年3月期までの5事業年度において、カルロス・ゴーン前会長の役員報酬が実際には99億9800万円であったところ、これを49億8700万円として虚偽の有価証券報告書を5回にわたり関東財務局に提出したのが金融商品取引法違反(有価証券報告書虚偽記載罪)に問われているとのことである。
ここで、虚偽記載容疑として盛んに報道されているのが、ゴーン前会長が海外子会社に自宅として海外の高級住宅を購入させていたというものである。
日産自動車は、2010年ごろ、オランダに資本金60億円で子会社を設立。この海外子会社の資金を使って、リオデジャネイロの5億円超のマンションとベイルートの高級住宅が相次いで購入され、いずれもゴーン前会長に無償で提供された。購入費に加え、維持費や改装費も日産自動車が負担し、その総額は20億円超になるという。
一方、パリやアムステルダムでは日産の別の子会社などが、ゴーン前会長の自宅用物件として、高級マンションを購入したり借りたりしたが、ゴーン会長が負担すべき家賃について一部が支払われていなかった疑いがあると報道されている。
さらにまた、
・日産自動車は、2003年6月の株主総会で、役員報酬としてストック・アプリシエーション権(SAR)と呼ばれる株価連動型インセンティブ受領権の導入を決定し、ゴーン前会長は2011年3月期以降、合計40億円分のSARを得ながら、その報酬額が有価証券報告書に記載されていないこと
・ゴーン前会長はオランダの子会社から2017年まで年間1億円から1億5千万円程度の報酬を受け取っていたが、これが有価証券報告書に記載されていないこと
なども大きく報道されている。
なるほど、ゴーン前会長は巨額の経済的便益を日産自動車から受けていたのであろう。しかし、巨額の経済的便益を受けていたことと有価証券報告書虚偽記載罪は何の関係もない。
これらの経済的便益が「有価証券報告書虚偽記載罪」の犯罪構成要件を満たすためには、
①問題となる経済的便益が、会計基準上有価証券報告書に記載すべき事項(=犯罪事実)であり、かつ、②ゴーン前会長自身が、本件経済的便益は会計基準上有価証券報告書に記載すべきものと知りながら、敢えて不記載としたという認識(=故意)
がなければならない。
「有価証券報告書虚偽記載」は故意犯なので、ゴーン会長に故意が認定できなければ、本件の有価証券報告書虚偽記載罪は成立しない。そこで、有価証券報告書における開示額の算定基準が問題とされるところ、2009年12月17日に言い渡された日債銀事件の最高栽判決における補足意見には、「有価証券報告書の一部をなす決算書類に虚偽記載があるかどうかは決算書類に用いたとする会計基準によって判断されるべき」と記載されている。
「総額1億円以上の役員ごとの連結役員報酬等の総額」は「有価証券報告書の一部をなす決算書類」そのものではないが、求められる開示額は「連結役員報酬等の総額」とされているのだから、その算定基準が会計基準にあることは自明であり、その会計基準とは連結財務諸表等規則並びに「企業内容等の開示に関する内閣府令」に他ならない。
ここで問題とされている海外の高額マンションの購入は、日産自動車が資産を買って、それをゴーン氏が専属的に使用していた、というだけのことだ。そこには損失が発生しておらず、したがってこれは会計基準上の役員報酬とはならない。
次に、オランダの海外子会社の報酬が漏れていたというような報道もあるが、日産の連結対象となるオランダの子会社は「ニッサン・インターナショナルホールディングスBV社」。その資本金は19億ユーロなので、ゴーン前会長が報酬を得ていたとされるオランダ法人なるものは、連結対象会社ではない。非連結子会社から得た役員報酬は内閣府令が定める連結役員報酬に該当しない。
次に、40億円のSRSについて検討すると、SRSはストック・オプションとは異なり、基準株価からの上昇分相当額が現金として支払われる。ならば、本件SRSは、複式簿記原理に従い、必ず費用処理されていたに違いなく、それが損益計算書に計上されていたこともまた疑いの余地がない。
問題は費用処理の勘定科目が役員報酬となっていたかどうかで、この時代のSRSは税務上損金算入が認められていなかったので、役員報酬ではなく「交際費」と処理された可能性が高く、そうであれば、交際費でも役員報酬として開示しなければならないというヤヤコシイ会計基準を、ゴーン社長が認識していたかどうかにある(ゴーン前会長が日本の連結財務諸表規則や開示内閣府令などを知っているはずがない)。
以上、ゴーン前会長にかけられた全ての疑惑について、ゴーン氏の無実は明白にして動かない。
結局、これは東京地検特捜部による日産自動車の内紛に対する民事介入ではないか。
※抜粋
〔 出典:現代ビジネス 〕
--- Ginkou ---
今回のネタもまた当サイトの趣旨から外れているような気もしますが、ゴーン氏の逮捕問題です。
先日の別のコラムでも書いたように筆者は今回の逮捕に全く納得していません。役員報酬を過小に載せた「有価証券報告書の虚偽記載」ということですが、仮にゴーン氏の報酬が20億円だろうと逆に5億円だろうと、投資家の投資判断にも株価にも全く影響しません。
仮にウソをついていたなら宜しくはありませんが、少なくとも特捜部が乗り込んできて逮捕するような事案ではありませんね。
加えて、ゴーン氏の資金流用疑惑がどんどんリークされて、ゴーン氏=金の亡者、悪人と印象づけられていく流れにも薄気味悪さを感じます。
要するに全てが「特捜部の筋書き通り」となるよう外堀が埋められていっており、いかにも「昭和の捜査」の匂いがするわけですね。平成最後の冬なのに・・・。そしてこうした「昭和の捜査」のやり方が数々の冤罪事件を生むこととなったのはご存知の通りです。
そうしたわけで日に日に筆者の中で、「ゴーン氏はそんなに悪いことをしていないのでは?」という疑念が膨らみつつあるわけですが、その疑念を大きく後押しする内容となっているのが上記、元会計士が書かれたコラムですね。内容を抜粋していくと
・なるほど、ゴーン前会長は巨額の経済的便益を日産自動車から受けていたのであろう。しかし、巨額の経済的便益を受けていたことと有価証券報告書虚偽記載罪は何の関係もない。
・「有価証券報告書虚偽記載」は故意犯なので、ゴーン会長に故意が認定できなければ、本件の有価証券報告書虚偽記載罪は成立しない。
・海外の高額マンションの購入は、日産自動車が資産を買って、それをゴーン氏が専属的に使用していた、というだけのことだ。そこには損失が発生しておらず、したがってこれは会計基準上の役員報酬とはならない。
・オランダの海外子会社の報酬が漏れていたというような報道もあるが、非連結子会社から得た役員報酬は内閣府令が定める連結役員報酬に該当しない。
・SRSは税務上損金算入が認められていなかったので、役員報酬ではなく「交際費」と処理された可能性が高く、そうであれば、交際費でも役員報酬として開示しなければならないというヤヤコシイ会計基準を、ゴーン社長が認識していたかどうかにある(ゴーン前会長が日本の連結財務諸表規則や開示内閣府令などを知っているはずがない)。
と明快に切り捨てていてとても気持ちがいいです(笑)。
そして結論としては「ゴーン前会長にかけられた全ての疑惑について、ゴーン氏の無実は明白にして動かない。」とのことですね!
書かれている方は、公認会計士ながら「キャッツ有価証券報告書虚偽記載事件で逮捕・起訴。一貫して容疑を否認し、無罪を主張したが、2010年、最高裁で上告棄却。懲役2年、執行猶予4年の刑が確定。公認会計士登録抹消。」とのことですので、特捜部に遺恨があるのは間違いなく、そうしたバイアスは考慮する必要がありますが、しかし大手メディアの報道内容と比較すれば圧倒的に説得力があります。
ゴーン氏が故意であることを否定し続ければ不起訴になる気すらしますね・・・そもそも違法となる可能性のある処理を指示するとも思えませんし。筆者だって聞かれれば必ず「合法的に」と言うと思います。仮に違法処理を期待するとしても、部下の忖度を願うのみです(笑)。
果たして特捜部は自らの筋書きを押し通すことができるのでしょうか?
もちろん筆者は特捜部でもなく、ゴーン氏でもなく、真実のみを支持します。
ちなみにゴーン氏が不起訴となれば、日産や三菱自動車が氏をどのように処遇するのかも気になるところです。
いずれにしても今回の「ゴーン氏排除」が短期的には日産にとってプラスになることは間違いなさそうです。ルノーの影響力を低下させることができますからね。
ただ長期的にはどうなのでしょうね?ゴーン氏が傑出した経営者であったのは事実だと思いますので、その穴埋めはなかなか難しそうです。
株主からすれば・・・やはりゴーン体制の方が安心ですよね。実績もありますし。ゴーン氏が20億円の報酬をもらおうが、30億円の報酬をもらおうが、それ以上に稼ぎ株価を上げてくれれば不満はないはずです。
その株主にとって強い味方であるはずのゴーン氏が金融商品取引法違反で逮捕されるというのも何とも皮肉ですね・・・。
では今回の読者アンケートは、「有価証券報告書虚偽記載罪で日産元会長のカルロス・ゴーン氏が逮捕されましたが、専門家からは無罪であるという指摘もあります。ゴーン氏は逮捕されるべき?されないべき?」でいきましょう。投票は12月28日まで。
■【読者アンケート】有価証券報告書虚偽記載罪で日産元会長のカルロス・ゴーン氏が逮捕されましたが、専門家からは無罪であるという指摘もあります。ゴーン氏は逮捕されるべき?されないべき?(12月28日まで)
https://www.ginkou.info/enquete/?p=511
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