まずは前回の読者アンケートを振りかえってみます。前回の「中国政府は6%成長を維持するため大規模な経済対策を打ち出しましたが、一方企業債務はすでに日本のバブル期を超えているという指摘もあります。中国のバブルが破裂するのはいつ?」では・・・
1位:1年以内 36%
2位:3年以内 27%
3位:10年以内 18%
〃 :20年超 18%
となりました。1位は「1年以内」で約4割ですね!仮にそうなれば世界経済に激震が走ることになります。さすがにそれはないような気もしますが、中国経済の実態が分からないという点でも、中国政府がどこまでコントロールできるか未知数という点でも、可能性はゼロではないわけで、リスクとしては頭の片隅に入れておきたいですね。
個人的にはずっと6%成長を続けるのは不可能だと思いますし、そうでなくても一人っ子政策による少子高齢化問題はいつかどこかで顕在化しますからね。細かな景気のスローダウンはさておき、大規模なクラッシュが「10年以内」には起こりそうな気がします。
ちなみに読者の方からこんな感想をいただきました。
「私は中国のバブルは破裂しないと思っておりますので、破たんしないの選択肢がほしいです。理由は、中国が健全な資本主義経済で無く国家管理であり、日本の国債、財政が破たんしないのと同じようなものだと考えてます。いくら国や地方が借金を重ねても、返せという外国からの圧力が無いと自国だけではそのまま延命するような気がします。実際は分かりませんが。」
確かに「バブルが破裂しない」の選択肢は入れてなかったですね・・・申し訳ありません(汗)。
バブル経済の破裂=国家財政の破綻というわけではありませんので、中国の財政が破綻しなくても景気がクラッシュする可能性はあると思います。まさに日本のバブル崩壊がそうでしたね。
ただ特異なのはご指摘の通り経済が「国家管理」という点です。歴史的には国家管理の取り組みはことごとく失敗してきたわけですが、中国の場合はどうでしょうか?
ではアンケートへの投票がまだの方は投票をお願いいたします。アンケートは4月6日まで。
〔投票〕https://www.ginkou.info/enquete/?p=595
〔前回のコラム〕中国バブルはいつ破裂する?
--- Ginkou ---
ネット投資仲介を集団提訴へ 50人超「虚偽説明で資金募る」 計11億円賠償求める
https://www.nikkei.com
インターネット経由で融資を仲介するソーシャルレンディングの仕組みを使って集めた資金を目的外に流用したなどとして、投資家54人と法人3社が業界最大手「maneoマーケット」(東京・千代田)などを相手取り、計約11億円の損害賠償を求める訴訟を8日に東京地裁に起こす。
原告の代理人の鈴木英司弁護士によると、請求額は同種訴訟で過去最高。提訴するのはmaneo社と、同社を通じて投資家から資金を集めた「グリーンインフラレンディング」(東京・港)やそのグループ会社、グリーン社などの代表取締役の男性の4社1人。
訴状などによると、グリーン社はmaneo社を通じて、国内での太陽光発電や海外での水力発電など自然エネルギー分野への融資名目で出資者を募った。
ところが実際にはグリーン社は集めた資金をグループ会社に貸し付け、本来の目的と異なる事業などに使っていた。グループ会社は自己資金と投資家から集めた資金を同じ口座で管理していた。現在は出資者への利息配当や償還が滞っているという。原告はmaneo社やグリーン社が虚偽の表示で資金を募り、資金管理にも問題があった結果、損害が発生したと主張している。
maneo社のホームページによると、同社は2007年8月設立のソーシャルレンディングの草分け的存在。18年3月期の売上高は前期比1.5倍の約32億円、営業利益は同2.1倍の約7億4千万円と急成長を遂げている。
金融庁は18年7月、同社が仲介したグリーン社への融資について資金管理に不備があるとして業務改善命令を出し、maneo社は19年3月4日、融資仲介先の選定や管理について基準を設けるなど運営体制を見直したことを公表している。
〔 出典:日本経済新聞 〕
--- Ginkou ---
個人的にはずっと眉唾だと思ってきたのがソーシャルレンディングです。
低金利の日本では、預金金利を思いだしてもらえれば分かるように、安全性の高い運用をしようとするとゼロに近い利回りとなってしまいます。
これは融資を受ける側からすれば1%を下回るような金利で借りられているわけですから当然ですね。住宅ローン金利はもはや0.5%あたりが中心価格帯となりつつあります。
そうした運用難の状況の中、ソーシャルレンディングは5%や10%と言った利回りを喧伝して資金を募集しているわけですから「怪しい」と思わない方がどうかしています。
もちろん、中にはそうした高利の資金を借りるしかない会社が存在するのは理解できます。赤字だったり、破綻寸前だったり、担保がない、というような場合ですね。
言い換えれば「5~10%の倒産リスクがあるので、利回り5~10%になっている」ということなら分かります。
しかしどのソーシャルレンディングもそうしたリスクの開示をほとんど全く行っておらず、むしろ「担保も保証もある」と安全性を強調しているところばかりです。
「安全性が高いのに高利回り」など、金融理論としても社会常識としてもあり得ません。「無知」か「詐欺」か「その両方」かですね。
そんなきな臭いソーシャルレンディングですが、案の定ここに来て金融庁の処分などをキッカケに次々と破綻し始めています。既に投資されている方には申し訳ないですが、新たな被害を増やさないためにも仕方ないのかなと思います。
そしてそうした淘汰の流れは業界最大手であるmaneo社にも忍び寄っています。上記の通りmaneo社が仲介したグリーンインフラレンディングに投資した投資家54人が11億円の損害賠償を求めて訴訟を起こしたのですね!
すでにmaneo社に業務改善命令が出されている点を踏まえれば一定の販売責任・管理責任が問われるのは間違いないと思います。
そして問題は、今回の訴訟はmaneo社が仲介した案件のごく一部に過ぎないという点です。というわけで現時点の延滞債権の金額をチェックしてみるとこうなっています。
・61億94百万円
いつの間にか、こんなに増えているんですね・・・。
次に現在の貸出金額をチェックしてみるとこうなっています。
・238億32百万円
実に26%もの債権が延滞しているわけですね!担保処分によってどれくらい回収できるかは分かりませんが、投資家にかなりの損失ができるのは間違いなさそうです。やはり5~10%のリターンの裏にはそれ以上の倒産リスクがあったということですね・・・。
いよいよソーシャルレンディングの命運も風前の灯となっているわけですが、加えてmaneo社が考慮しないといけないのは上記訴訟リスクですね。
仮に約62億円の貸倒が発生するとして、その半分の責任があると認定されれば約30億円の訴訟費用が発生します。
ではmaneo社の連結決算の中身はと言うと、2018年4月~12月の9ヶ月決算で当期利益が4億円、自己資本が20億円ということで、あっさり債務超過になってしまうのですね!つまり支払えないということです。
進退が極まりつつあるmaneo社ですが生き延びることはできるのでしょうか?
仮に生き延びられれば、今度こそ誠実な運用をしてほしいと思います。
というわけで今回の読者アンケートは、「すでに26%もの貸し出しが延滞となっているmaneoですが、投資家から集団訴訟が起こされるなど進退が極まりつつあります。maneo社は生き残れると思う?生き残れないと思う?」でいきましょう。投票は4月12日まで。
■【読者アンケート】すでに26%もの貸し出しが延滞となっているmaneoですが、投資家から集団訴訟が起こされるなど進退が極まりつつあります。maneo社は生き残れると思う?生き残れないと思う?(4月12日まで)
https://www.ginkou.info/enquete/?p=601
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